『ロープ』

この週末は、ブルーレイで『ロープ』を見た。

1948年のアメリカ映画。
監督は、『疑惑の影』『私は告白する』『裏窓』『泥棒成金』『ハリーの災難』『間違えられた男』『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『フレンジー』『ファミリー・プロット』のアルフレッド・ヒッチコック
主演は、『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『裏窓』『めまい』『西部開拓史』のジェームズ・ステュアート。
共演は、『スパルタカス』のジョン・ドール、『十戒』のセドリック・ハードウィック
ワーナー・ブラザーステクニカラー、スタンダード。
ヒッチコック初のカラー作品である。
この時代にカラーというのが驚きだ。
画質は良い。
優美なテーマ曲。
カーテンで閉ざされたアパートの一室。
いきなりロープで首を締められる男。
後に、彼がデイヴィッドだと分かる。
殺したのは、若い二人の男、ブラントン(ジョン・ドール)とフィリップ(ファーリー・グレンダー)だ。
そして、デイヴィッドの死体をチェストに隠す。
カーテンを開けると、摩天楼がよく見える。
ここはニューヨーク。
しかし、本作は、最後までこの部屋から出ない。
更に、全編をワンシーンでつなげた実験的作品である。
まあ、舞台の映画化だから、この手法も成立するのだろう。
被害者はハーバードの学生。
加害者も同級生のようだ。
計画通りの完全犯罪。
シャンパンを開ける二人。
だが、自信満々のブラントンに対し、不安でいっぱいのフィリップ。
本作は密室劇で、限られた登場人物しかいない。
それぞれの性格の描き分けも見事である。
これから、この部屋でパーティが行われる。
ピアノの得意なフィリップが田舎へ帰るから、演奏会も兼ねた送別会という名目のようだ。
ベルが鳴る。
来客のようだ。
チェストからロープがはみ出しているのを、ブラントンが引き抜き、台所の引き出しに入れる。
家政婦が帰って来た。
ブラントンとフィリップは、せっかく家政婦が食卓の上に準備していた食器を、フタが開けられないようにチェストの上に移す。
若い学生のケネスがやって来る。
彼は、被害者デイヴィッドの親友であり、デイヴィッドの婚約者ジャネットの元カレでもあった。
ややこしいね。
ジャネットがやって来て、元カレと鉢合わせになり、険悪な空気。
セッティングしたブラントンを問い質すジャネット。
デイヴィッドの父親ケントリー氏がやって来る。
親戚のアトウォーター夫人と一緒に。
本当は、ケントリー氏は夫婦で来る予定だったが、奥さんが風邪を引いたので来られなくなったのであった。
フィリップは、緊張してグラスの脚を折ってしまい、手にケガをする。
ブラントンは気付くが、フィリップは、他の人達に気付かれないようにそれを隠す。
来るはずのデイヴィッドがなかなか来ないので、「デイヴィッドはどうした?」とケントリー氏が聞く。
誰も分からない。
そこへ、カデル(ジェームズ・ステュアート)が来る。
彼はハーバードの教授で、ブラントンやフィリップは彼の教え子であった。
頭のいいカデルは、ブラントンがどもっているのを指摘する。
ブラントンは興奮すると、よくどもるのであった。
更に、「なぜ、わざわざチェストを食卓にするのか?」と尋ねる。
カデルが現れたことで、一気にサスペンスが高まる。
実に、ヒッチコックらしい。
そんなこともつゆ知らず、女性達は適当な芸能ネタの会話を楽しんでいる。
ジェームズ・メイソンとか、ケーリー・グラントとか、イングリッド・バーグマンとか、実在の名前が次々に出て来る。
それにしても、デイヴィッドがなかなか来ない。
さすがに皆、おかしいと思い始める。
ブラントンが、フィリップが農場でニワトリを絞め殺した話しをする。
フィリップは、(先刻の殺人を思い出し)、色をなして怒る。
カデルが怪しむ。
彼は、わざわざ殺人の話しをし始める。
ブラントンは、優秀な者は愚かな者を殺しても良いと言う。
スゴイ思想である。
ナチスみたいだ。
殺人の話題に気分を悪くしたケントリー氏が怒り出す。
さあ、カデルは二人の殺人を見抜けるだろうか?
本作は、最初から最後までこんな調子で引っ張る心理劇。
派手な見せ場はない。
それでも、最後まで緊張感が途切れないのはスゴイ。
ヒッチコックは、こういう実験的な手法をどんどん映画に取り入れて、このジャンルを発展させた功労者だ。
そして、後世の映画作家は、何も知らないフリをして、それをパクるのであった。