『麗しのサブリナ』

この週末は、ブルーレイで『麗しのサブリナ』を見た。

麗しのサブリナ [Blu-ray]

麗しのサブリナ [Blu-ray]

1954年のアメリカ映画。
監督は、『サンセット大通り』のビリー・ワイルダー
撮影は、『荒野の七人』『西部開拓史』のチャールズ・ラング・Jr.
衣装は、『明日に向かって撃て!』『スティング』『ファミリー・プロット』のイーディス・ヘッド。
主演は、『カサブランカ』『三つ数えろ』『潜行者』『キー・ラーゴ』のハンフリー・ボガート、『戦争と平和』のオードリー・ヘプバーン、『サンセット大通り』『戦場にかける橋』『カジノロワイヤル』『タワーリング・インフェルノ』『オーメン2/ダミアン』のウィリアム・ホールデン
共演は、『泥棒成金』のジョン・ウィリアムズ
まあ、本作を見たのは初めてだが、最初からいい印象はなかった。
「サブリナ」と聞いて思い浮かぶのは、サブリナ・パンツ?
家入レオの歌?
そもそも、オードリー・ヘップバーンが好きじゃない。
何で彼女が、美しい女性の代表のように持ち上げられるのかが全く分からない。
クセのある顔だよ。
エラが張っているし。
ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』は傑作だったので、それを頼みに本作を見た。
パラマウント映画、モノクロ、スタンダード・サイズ。
華やかなテーマ音楽が流れる。
ニューヨークから50キロ離れた所にある大邸宅のララビー家。
日本に置き換えると、東京から50キロなら、鎌倉辺りか。
いい所だな。
この大富豪ララビー家のお抱え運転手フェアチャイルドジョン・ウィリアムズ)の娘がサブリナ(オードリー・ヘップバーン)だ。
で、このララビー家には息子が二人いる。
長男のライナス(ハンフリー・ボガート)はエール大学出身で、勤勉実直な実業家。
一方、次男のデイヴィッド(ウィリアム・ホールデン)は遊び歩いて女をナンパしまくっているチャラ男だった。
まあ、兄弟の描き分けとしては、よくあるパターンだ。
サブリナは、チャラ男のデイヴィッドにほのかな想いを寄せていたが、彼の方は、運転士の娘など全く眼中にない。
ララビー邸で開かれているパーティーを、庭の木の上に登って、ただ眺めてはため息をつくだけのサブリナ。
身分違いの恋だな。
階級闘争として見れば、少しは興味が湧くかも知れない。
デイヴィッドは、大銀行の社長令嬢エリザベスと付き合っている。
フェアチャイルドは、娘に身分違いの恋を諦めさせようとして、パリの料理学校へ留学させることに決める。
出発前夜、サブリナはデイヴィッドへの恋に敗れたという未練たらしい遺書を父親宛てに残し、車庫へ入って、排ガス自殺をしようとする。
そこを助けたのが、堅物のライナス。
もう、先の展開が読める。
で、サブリナはパリへ旅立つ。
お抱え運転手って、娘を海外留学させられるほど収入があるのか?
我が家は下層階級だったので、「東京の大学に行きたい」と言ったら、「生活費は自分で何とかしろ」と言われたよ。
東京で生活出来るだけのカネを学生がバイトで稼ぐのは大変だ(と言うより、無理)。
案の定、挫折して、大学は中退するハメになったが。
まあ、いいや。
パリの料理学校というのは、阿倍野辻調みたいなものだろうか。
フランスなのに、何故か先生が英語を話している。
一方、ビジネスに忙しいライナスの車には、電話が付いている。
自動車電話って、1950年代なのに。
スゴイな。
それで、異国のサブリナはと言えば、デイヴィッドのことばかり思い出されて、料理に身が入らない。
ところが、たまたま料理学校で隣の席だった74歳の老男爵に気に入られる。
で、アメリカでは、デイヴィッドが令嬢と結婚するという記事がデカデカと新聞に載った。
何と、4度目の結婚らしい。
移り気だから、全く長続きしないようだ。
記事を見たデイヴィッドは激怒する。
どうやら、ライナスが弟に早く身を固めさせるために、新聞社にリークしたらしい。
ライナスは、仕事が忙しくて、独身だった。
今は、プラスチックの開発・販売を推進している。
2年後、サブリナは飛行機でフランスから帰って来る。
「磨きがかかって素敵な女性になった」と言うが、要するに、爺さんの男爵に気に入られて、高い服をいっぱい買ってもらっただけだ。
よく、サブリナに憧れる女性が云々と聞くが、こんな都合のいい話しに憧れるかね。
これが女性の自立だろうか。
駅で父親が迎えに来るのを待つサブリナ。
デイヴィッドが車で駅の前を通り掛かる。
キレイな娘がいるなと、サブリナをナンパする。
彼は、サブリナのことに全く気付かない。
でも、声を掛けられて嬉しい。
本当に外面だけだよ。
サブリナは、飼い犬にまでデイヴィッドという名前を付けていた。
彼女は、デイヴィッドに家まで送ってもらう。
何故か、その家はディヴィッドの家なのだが。
ここまで来ても、未だ彼女がお抱え運転士の娘だと気付かない。
正真正銘のバカだな。
デイヴィッドは、サブリナをその夜のパーティーに誘う。
エリザベスとの婚約披露パーティーなのだが、そんなことは最早どうでもいいらしい。
ほくそ笑んでいるサブリナにも、何か女のいやらしい面を見るようで、気分が悪い。
その夜、サブリナはすごいドレスを着てパーティーに現れる。
もう、この時点で普通の庶民の娘ではない訳よ。
何か、ちゃんちゃらおかしいけどね。
それを「素敵!」などと喝采している人達の神経が分からん。
で、サブリナは、すっかり彼女に魅せられたデイヴィッドと踊る。
婚約者そっちのけで。
まあ、身分違いの女が、色気を使って成り上がる話しなら、それなりに面白いんだろうけど。
どうも、サブリナを「清純な娘」として描いているところが気持ち悪い。
かつて、デイヴィッドがエリザベスに愛の告白をした屋内のテニスコートに、サブリナは彼を誘う。
つまり、前に二人のことをこっそり見ていたからだ。
すっかり置いてけぼりを食らったエリザベスは、何故か兄貴のライナスと踊る。
当然ながら、エリザベスの父親は激怒する。
「紳士は使用人の娘に恋をせん!」と。
それに対して、ライナスは、「今は20世紀ですから」と答える。
彼は、実業家でありながら、なかなか進歩的な考えの持ち主だ。
まあ、しかし、最後まで見ていると、このライナスというのも、大したヤツとは思えないのだが。
ついでに、エリザベスの親父は、「財閥の者が民主党を支持してはイカン!」とも言う。
ははん、コイツは典型的な共和党支持者だな。
アメリカの政党支持層が透けて見える。
もっとも、ヒステリー女とその黒幕のタヌキ幹事長が率いる日本の民進党とやらでは、未来永劫、政権など取れそうもないのだが。
それはさておき、アホなデイヴィッドは、サブリナと二人で飲もうとシャンペン・グラスを二つ、ズボンの後ろポケットに隠している。
ライナスが、デイヴィッドを椅子に座らせたものだから、デイヴィッドはケツに大ケガをしてしまった。
何とマヌケな。
これじゃあ、100年の恋も覚めるわな。
そんなことと走らないサブリナは、テニスコートでずっと待っている。
で、何故か、代わりにライナスが来る。
兄貴は、「弟の代わりだ」と言いながら、サブリナにキスをする。
何じゃ、そりゃ。
もうね、アホな弟と、ファッションの力でそれを落とした娘と、それにちょっかいを出す兄貴。
で、後半、サブリナはその兄貴になびいて行く訳だ。
何か、みんな軽いよ。
僕は、この作品の主役3人には全く感情移入出来ないね。
むしろ、ガチガチの保守であるエリザベスの親父とか、身分が低い故に娘のことを案じるサブリナの父親とかの方が、よほど人間的だ。
結末は、書くのもバカらしい。
本作を映画史上の傑作のように扱う人の気が知れん。
アカデミー賞衣装デザイン賞受賞。