この週末は、ブルーレイで『イヴの総て』を見た。
![イヴの総て [Blu-ray] イヴの総て [Blu-ray]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51DxJWhrlVL._SL160_.jpg)
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2014/05/02
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (4件) を見る
監督はジョゼフ・L・マンキーウィッツ。
悪名高い『クレオパトラ』を撮った人だな。
製作は、『史上最大の作戦』『トラ・トラ・トラ!』のダリル・F・ザナック。
音楽は、『西部開拓史』『大空港』のアルフレッド・ニューマン。
衣裳は、『サムソンとデリラ』『麗しのサブリナ』『泥棒成金』『明日に向かって撃て!』『スティング』『ファミリー・プロット』のイーディス・ヘッド。
主演は、『ナイル殺人事件』のベティ・デイビス。
共演は、『私は告白する』『十戒』のアン・バクスター、『サムソンとデリラ』のジョージ・サンダース、『地球の静止する日』のヒュー・マーロウ、『裏窓』『西部開拓史』のセルマ・リッター。
あと、マリリン・モンローもチョイ役で出ている。
僕は最初、本作をマリリン・モンロー主演だと思っていた。
そして、彼女には全く興味がないので、「どうせ下らないラヴ・ロマンスか何かだろう」と思っていたのだが、ゴメンナサイ。
食わず嫌いだった。
本作は、芸能界の舞台裏を暴露した映画である。
昨今の我が国の芸能界を少し見れば、この映画の公開から60年以上経った日本でも、状況は何ら変わっていないことが分かる。
20世紀フォックス。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
画質は良い。
壮快なテーマ音楽から始まる。
アメリカ演劇界最高の栄誉であるセイラ・シドンズ賞の授賞式。
シドンズ協会会長らしい老俳優の長演説が続くが、そんなものはどうでもいい。
今日の主役は、史上最年少で受賞した女優のイヴ・ハリントン(アン・バクスター)。
淡々としたナレーションで語るのは、批評家アディソン・ドゥイット(ジョージ・サンダーズ)。
イヴの受賞に対して、会場にいる先輩達の実に冷ややかな視線。
本作の主要登場人物が早くも巧みに紹介されるのだが、これで、この先の展開も見事に暗示される。
受賞の瞬間、ストップ・モーションになる。
ここから、劇作家の妻カレン・リチャーズ(セレステ・ホルム)の回想。
本作は、全編を通して、登場人物によるナレーションを実に効果的に使っている。
イヴはラッキー・ガールだった(大いに皮肉を込めて)。
数ヶ月前、毎晩劇場の楽屋口に立っている田舎娘(イヴ)に、カレンが声を掛ける。
イヴは、女優マーゴ・チャニング(ベティ・デイビス)に憧れて、毎日彼女の舞台を観に来ていたのであった。
マーゴは、4歳の時に『真夏の夜の夢』でデビューしたという大女優。
カレンは、マーゴにイヴを紹介する。
イヴは、自分の身の上を語る。
彼女はウィスコンシン出身で、子供の頃からお芝居の真似事が好きだった。
しかし、家が貧乏で、家計のために学校を辞めて、秘書になる。
町には小さな演劇サークルがあり、そこで知り会った無線技士と結婚。
だが、彼は戦争に行って、死んでしまう。
この話しを聞いて、あまりの哀れさにマーゴは泣き出してしまった。
マーゴはイヴをいたく気に入り、自分の家で付き人として働かせることにする。
この時の、先輩付き人女性の、ものすごく怪訝そうな顔が、物語の先行きを、またも暗示している。
マーゴには、若手演出家のビル・サンプソン(ゲイリー・メリル)という愛人がいた。
彼は、「今の演劇界は汚い」と言って、ハリウッドへ行くことにする。
マーゴがビルを見送りに行く時、イヴも同行する。
この時点で、ビルもイヴのことを気に入っていることが示される。
マーゴは、イヴを自宅の客間に住まわせることにした。
それを聞いた付き人のオバチャンは、露骨にイヴのことが気に入らない態度を見せる。
イヴは、表向きはよく気が付く娘であったが、実は毎週、秘かにビルに取り入るために手紙を送っていた。
それを知ったマーゴは、イヴに警戒心を抱き始める。
この、これまでイヴを信頼していた人達が、少しずつ彼女を不審に思うようになって行くのが、本作のミソ。
ある日、ビルの誕生パーティーがマーゴ邸で行われた。
ビルは、マーゴをないがしろにして、ずっとイヴと話している。
マーゴは、それを見て嫉妬してしまう。
ビルは、「いい娘じゃないか」と、やたらイヴの肩を持つ。
その夜は、多くの演劇人達が集まっていた。
会話の中に、ハムレットやらマクベスやらが何度も出て来る。
批評家のアディソン・ドゥイットは、新進女優カズウェル(マリリン・モンロー)を売り込むために、この会場に来ていた。
知らずに見ていると、全くマリリン・モンローとは分からないが、彼女も、本作と同様、大女優になって行くのであった。
何と象徴的な。
ドゥイットは、イヴに声を掛ける。
このオッサンは、若い女の子で、芸能界でのし上がれそうな原石を常に探している。
彼の目は鋭く、手口はいつも同じだ。
ああ、何か、最近の日本でも、同じようなことをしているプロデューサーがいるね。
A◯Bとか、何とか坂とか、集団で出て来ては、どんどん食い物にされて、消えて行く女の子達。
どうだ、この予言的な映画は!
ドゥイットを演じたジョージ・サンダースは、この見事な怪演で、アカデミー賞助演男優賞を受賞する。
マーゴは、もう今日のパーティーの何もかもが面白くない。
飲み過ぎて、泥酔してしまう。
彼女は、もうイヴにはウンザリしていて、一刻も早く、自分の元から手放したいのであった。
彼女は大女優だったが、40歳を超えて、年齢にコンプレックスがあった。
こればかりはどうしようもない。
誰にだって、若い時代はあったのだが。
それにしても、老けた40歳だな。
僕は今年45歳になるので、ショックだ。
この時代は、皆今よりも10歳は老けていたのかな。
このタイミングで、ちょうど舞台でマーゴの代役を努める女優がお産で休むことになった。
こんな千載一遇のチャンスを見逃すイヴではない。
彼女はカレンに取り入って、「私を代役に使って」と頼む。
イヴは、とにかく自分が表舞台に出て、喝采を浴びたいのであった。
こういうタイプの女はいるよね。
最近の日本でも。
特に政治家に多い。
差し障りがあるので、実名は挙げないが、某都知事とか、某野党第一党の党首とか。
こんなのがトップに立ったら、自分が目立つことしか考えないから、周りは大迷惑だ。
で、イヴはマーゴの知らない内に代役の座をまんまと手に入れる。
ドゥイットは、オーディションでイヴを大絶賛。
「若い時の君みたいだ」とマーゴに言う。
当然ながら、マーゴは激怒する。
プライドをズタズタにされたマーゴは、愛人のビルや、劇作家のロイド・リチャーズ(カレンの夫)に当たり散らす。
これには、味方だったカレンも、少し頭に来てしまった。
こうして、イヴはマーゴの人間関係をメチャクチャにしながら、自分の野望を次々と実現して行くのであった。
さあ、これからどうなる?
物語が進むと、イヴが最初に語った身の上話も、ウソだと分かる。
男は手玉に取られ、深く関わった者は、皆彼女の本性に気付く。
いやあ、女はコワイね。
イヴの変貌っぷりが素晴らしい。
もちろん、それは対称となるマーゴがいるからこそなのだが。
更に、「因果は巡る」と言わんばかりのラスト。
何と、普遍的な作品だろう。
本作は、アカデミー賞史上最多の14部門でノミネート(後に、『タイタニック』が並ぶ)。
アカデミー賞の舞台裏でも、映画を地で行くバトルが。
何と、アン・バクスターが「助演」でのノミネートに納得せず、ベティ・デイビスと二人が主演女優賞にノミネートされたのだ。
同じ作品から二人の女優が「主演」でノミネートされたのは史上初。
その結果、票を食い合って、二人とも受賞を逃したという。
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞、衣裳デザイン賞(白黒)、録音賞受賞。