イギリス文学史I(第7回)『アーサー王の死』(その2)

原文読解
それでは、『アーサー王の死』の冒頭部分(第1巻第1章)を読んでみましょう。
下に「原文(現代綴り)」「日本語訳」を記しました。
「原文」には、語注も付けてあります。

SIR THOMAS MALORY

Malory マロリー Sir Thomas ~(1400?-71)(イングランドの著述家/Arthur王伝説を集大成した(1469)/Caxton版(1485)タイトル Le morte Darthur)

Le Morte D'Arthur

Morte D'Arthur(Le)『アーサーの死』(Sir Thomas Maloryによって集大成されたArthur王伝説/フランス語からの散文訳で、1485年 Caxtonによって印刷された)
(1)

(原文)
(テキスト9ページ、1行目~)
Book I
CHAPTER 1. First, How Uther Pendragon sent for the Duke of Cornwall and Igraine his wife, and of their departing suddenly again

book(名)巻、編 ・Book I 第1巻(book oneと読む)
I(名)(ローマ数字の)I
chapter(名)(書物・論文の)章 ・chapter one 第1章
first(副)(second(ly)、third(ly)(第二(三)に)と列挙する時に文頭に用いて)まず第一に、最初に(firstly)
Uther(Pendragonアーサー王伝説)ウーゼル(ペンドラゴン)王(Britainの王でArthur王の父)
send for ~ ~を取り(呼び)に(人を)使いにやる
duke(名)(しばしばDuke/称号にも用いて)公爵
Cornwall(名)コーンウォール州(イングランド南西端の州、風光明媚(び)で有名/州都Bodmin)
Igraineアーサー王伝説)イグレーヌ(Uther Pendragon王の妻でArthur王の母)
his(代)彼の
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
their(代)彼ら(彼女ら)の
depart(自)(人・列車などが)出発する
again(副)元の所(状態)へ

(日本語訳)
1
ウーゼル・ペンドラゴンがコーンウォール公とその奥方イグレーヌを招いたこと。そして、二人が突如、立ち去ったこと。

(2)

It befell in the days of Uther Pendragon, when he was king of all England, and so reigned, that there was a mighty duke in Cornwall that held war against him long time. And the duke was called the Duke of Tintagel.

it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
befall(自)(~に)起こる
in(前)(時間を表わして)~(のうち)に、~の間、~中
day(名)(しばしば複数形で)時代、時世、時期 ・in the days of Queen Elizabeth エリザベス女王時代に
when(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(~すると)その時
England(名)イングランド(Great Britain島のScotlandとWalesを除いた部分)
so(副)(接続詞的に/and soとして)それゆえ、だから、それで
reign(自)(~の)主権を握る、(~に)君臨する、(~を)統治する
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)/(目的語節を導いて)/(同格節を導いて)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
mighty(形)(人・ものが)力強い、強力な、強大な
duke(名)(欧州の公国または小国の)君主、公
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの(先行詞がもの・人を表わす場合で、最上級の形容詞、all the、the only、the same、the veryなどの制限的語句を含む時、および、先行詞が疑問代名詞やall、much、little、everything、nothingなどの時に多く用いられる傾向があるが、絶対的なものではない)/(主語として)/(他動詞・前置詞の目的語として)
hold(他)(~を)持続する、維持する
long(形)(時間・過程・行為など)長い、長期にわたる ・a long time 長い間
time(名)(またa ~)(ある一定の長さの)期間、間 ・a long time 長い間
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)

ウーゼル・ペンドラゴン王がイングランド全土の王として治めていた頃のことである。コーンウォールにティンタジェル公という強大な領主がいて、長い間ウーゼルに刃向かっていた。

(3)

And so by means King Uther sent for this duke, charging him to bring his wife with him, for she was called a fair lady, and a passing wise, and her name was called Igraine.

by(前)(手段・媒介を表わして)~で
means(名)方法、手段
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)
charge(他)(人に)(権威をもって)(~するように)命じる(+目+to do)
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
fair(形)(古)(女性が)美しい ・a fair woman 美人
passing(副)すばらしく、たいそう(=very)
her(代)彼女の

そこで、ウーゼル王はティンタジェル公のもとに人を遣って、奥方ともども伺候するように命じた。奥方は美人でたいそう賢いという評判だったからである。奥方の名はイグレーヌといった。

(4)

So when the duke and his wife were comen unto the king, by the means of great lords they were accorded both.

so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、~ので
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
comen→come
unto(前)(古)~に、~のほうへ、~まで ・come unto ~に来る
by means of ~ ~によって、~を用いて、~で
great(形)身分(生まれ)の貴い、地位の高い、高貴の
lord(名)(Lordの敬称を持つ)貴族、華族
accord(他)(古)(争い・相違点などを)調和させる、調停する
both(代)(同格に用いて)両者とも、両方とも

ティンタジェル公と奥方はウーゼル王の御前に出、高官たちの取りなしで、和睦した。

(5)

The king liked and loved this lady well, and he made them great cheer out of measure, and desired to have lain by her. But she was a passing good woman, and would not assent unto the king.

like(他)(~を)好む、(~が)好きである
love(他)恋する、ほれ(てい)る
well(副)好意をもって、親切に
make(他)(人に)(~を)する(+目+目)
cheer(名)歓待、歓迎
out of(前)~の範囲外に(⇔within)
measure(名)(適当な)限界、限度 ・without measure 過度に
desire(他)(~を)強く望む、欲求する、望む(+to do)
by(前)(場所・位置を表わして)~のそばに(で)、のかたわらに(の)、の手元に
good(形)(道徳的に)良い、善良な、有徳の(⇔evil)
would(助動)(過去の意志・主張・拒絶を表わして)(どうしても)~しようとした
assent(自)(提案・意見などに)同意する、賛成する

ウーゼル王はこの奥方にすっかり惚れこんでしまったので、度はずれな歓迎をした。奥方と同衾したいものだと言い寄ったが、奥方はたいへん貞節な人だったから、どうしても王の言葉に従おうとはしなかった。

(6)

And then she told the duke her husband, and said, ‘I suppose that we were sent for that I should be dishonoured, wherefore, husband, I counsel you that we depart from hence suddenly, that we may ride all night unto our own castle.’

then(副)(しばしばandを伴って、前に続くことを示して)それから、その後で
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)/(+that)
suppose(他)(知っていることから)推測する、思う、考える(+that)
that(接)(副詞節を導いて)(目的を表わして)~するように、~せんがために
should(助動)(目的の副詞節に用いて)~する(ように)
dishonour(他)(古)(女性に)乱暴する
wherefore(古)(接)その理由で、それゆえ
counsel(他)(人に)(~するように)助言する、忠告する
from hence(古)この場所(時)から、ここより
may(助動)(目的・結果を表わす副詞節において)~するために、~できるように
ride(自)(しばしば副詞句を伴って)馬に乗る、乗馬する
all night ひと晩中、終夜
our(代)我々の、私たちの

そして夫のティンタジェル公にこう告げた。
「わたくしたちがここに呼ばれたのは、わたくしを辱しめるためだったようです。ですから、あなた、今すぐにここを発ちましょう。夜どおし馬をとばして、わたくしたちの城へ帰りましょう」

(7)

And in like wise as she said so they departed, that neither the king nor none of his council were ware of their departing.

in(前)(方法・形式を表わして)~で、~をもって ・in this way この方法で、こうやって
like(形)(外見・量など)同様な、類似の ・in like manner 同様に
wise(名)(単数形でだけ用いて)(古)方法、やり方、風(ふう)、具合、程度(=way、fashion、degree) ・in like wise 同じように
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
so(副)(代名詞的に)(動詞say、tell、think、hope、expect、suppose、believe、fear、hearなどの目的語として)そう
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
neither(副)(neither ~ nor ~で相関接続詞的に用いて)~も~もどちらも~ない(しない)(これが主語になる時には、動詞は単数の時には単数扱いに、複数の時には複数扱いに、人称・数が一致しない時には近いほうの主語に一致する)
none(代)(none of ~で)(~の)いずれも(だれも、何一つ)~ない(ofのあとに不可算の名詞か単数の代名詞がくる場合は単数扱い/名詞には必ずthe、thisのような限定する語がつく)
of(前)(部分を表わして)~の中の
council(名)(立法・諮問のために召集された人たちの)評議会、協議会、諮問会(各種機関の公式名に使うことが多い)→Privy Council
ware(古)(形)(~に)気づいている(=aware)(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を

奥方の言ったとおりに二人は宮殿をぬけ出したので、ウーゼル王も側近も誰一人、彼等の出発に気づかなかった。

(8)

As soon as King Uther knew of their departing so suddenly, he was wonderly wroth.

as soon as ~(接続詞に用いて)~するとすぐに、~するやいなや
know(自)(直接ではないが)(~のことを)間接的に知って(聞いて)いる(of)
so(副)(程度を表わして)それ(これ)ほど、そんな(こんな)に、これくらい
wonderly→wonderfully(副)不思議に(も)、驚くほど
wroth(形)(古)激怒して

二人に出しぬかれたのを知るやいなや、ウーゼル王は猛烈に腹を立てた。

(9)

Then he called to him his privy council, and told them of the sudden departing of the duke and his wife.

call(他)(~を)呼び出す、呼び寄せる、呼ぶ、招く(to)
privy council(名)(古)私的(機密)諮問機関
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の

枢密顧問官たちを呼びよせて、ティンタジェル公夫妻が不意に出発したと告げた。

(10)

Then they advised the king to send for the duke and his wife by a great charge:

advise(他)忠告する(+目+to do)
by(前)(手段・媒介を表わして)~で
great(形)重大な、重要な
charge(名)命令、指令、訓令、説示

顧問官たちは王に、ティンタジェル公夫妻に強硬な命令を発して、お呼びつけになるがよろしい、と進言した。

(11)

‘And if he will not come at your summons, then may ye do your best, then have ye cause to make mighty war upon him.’

will(助動)(主語の意志を表わして)(願望・主張/固執・拒絶などを示して)(~しようと)欲する、(あくまでも)~しようとする
at(前)(命令・要求などに)対して、受けて
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
summons(名)召喚、呼び出し
then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では
may(助動)(許可を表わして)~してもよろしい、~してもさしつかえない
ye(代)(二人称代名詞単数主格)あなたは
best(名)(one's ~、the ~)最善の努力 ・do one's best 最善を尽くす
have(他)(しばしば目的語に形容詞用法のto不定詞を伴って)((~すべき(できる))用事・時間などを)もっている、与えられている
cause(名)理由、根拠(+to do) ・have cause to do ~する理由がある
make(他)(~を)生じさせる、(~の)原因となる ・make war on ~に対して戦争を起こす
on(前)(動作の対象を表わして)~に対して、~に当てて

「もしティンタジェル公が王さまのお召しに従わない時は、御存分に遊ばされてよろしいかと存じます。大軍を以て戦争をしかける理由が、こちらにはあるわけでございますから」

(12)

So that was done, and the messengers had their answers, and that was this shortly, that neither he nor his wife would not come at him.

that(代)(指示代名詞)(前に言及しているか、場面上了解されている物事をさして)そのこと(⇔this)
messenger(名)使いの者、使者
this(代)(指示代名詞)(これから述べたり掲示しようとする物事をさして)こういうこと、次のこと
shortly(副)簡単に、短く
would(助動)(時制の一致により従属節内でまた間接話法で用いて)(意志未来を表わして)~しよう
come at ~ ~に至る、に達する

進言どおりに事は運んだ。やがて死者が返事を持って帰って来た。返事は、要するに、ティンタジェル公も奥方もウーゼル王の御前には伺候しない、というものであった。

(13)

Then was the king wonderly wroth. And then the king sent him plain word again, and bad him be ready and stuff him and garnish him, for within forty days he would fetch him out of the biggest castle that he hath.

send(他)(もの・言葉などを)送る、届ける(+目+目)
plain(形)(人・言動など)率直な、腹蔵のない、飾り(ごまかし)のない ・plain speaking 直言
word(名)(通例無冠詞で)知らせ、便り、消息
bad→bade
bid(他)(人に)(~するよう)命じる、勧める(+目+原形)
ready(形)構えの姿勢を取って(た)
stuff(他)(廃)(必要なものを)~に配備する、供給する、備え付ける(=furnish)
garnish(他)装飾する、~のみばをよくする
within(前)(時間・距離・範囲など)~以内で(の)、~を越えずに、~の範囲内で(⇔out of)
forty(形)(基数の40)40の、40個の、40人の
fetch out(~を)外に出す、引き出す、連れ出す
of(前)(起源・出所を表わして)~から、~の
hath(動)(古)haveの直説法3人称単数現在形 ・he hath=he has

王は怒り狂い、折り返して手紙を送り、「守備を固め、兵員食糧を備えるがいい。いかに強大な城に立てこもろうとも、四十日以内には必ずお前を引きずり出してくれるぞ」とはっきり言った。

(14)

When the duke had this warning, anon he went and furnished and garnished two strong castles of his, of the which the one hight Tintagel, and the other castle hight Terrabil.

have(他)(情報などを)入手する(している)、聞いて知(ってい)る
warning(名)警告、注意
anon(副)(古)ほどなく
two(形)(基数の2)2の、2個の、、二人の
strong(形)(とりでなど)強固な、堅固な
his(代)(of ~で)彼の(hisはa、an、this、that、noなどと並べて名詞の前に置けないからhisをof hisとして名詞の後に置く)
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
one(形)(基数の1)(another、the otherと対照的に)一方の、片方の
hight(形)(古)(と)呼ばれた
other(形)(the ~、one's ~)(二つの中の)もうひとつの、(三つ以上の中で)残りのもうひとつの

ティンタジェル公はこの警告を受け取ると直ちに、二つの堅固な城の護りを堅めた。一つはティンタジェル城といい、もう一つはテラビル城といった。

(15)

So his wife Dame Igraine he put in the Castle of Tintagel, and himself he put in the Castle of Terrabil, the which had many issues and posterns out.

Dame(名)デイム(knightに相当する勲位に叙せられた女性の敬称/男子のSirの場合同様に必ずChristian nameの前につける)
put(他)(副詞句を伴って)(~を)(~に)動かす、入れる、向ける(in)
himself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)
issue(名)出口(=exit)、はけ口(=vent)
postern(名)裏門、裏口

奥方イグレーヌはティンタジェル城に、ティンタジェル公自身はテラビル城にこもった。テラビル城の方には外へ通じる大門、通用門がたくさんあった。

(16)

Then in all haste came Uther with a great host, and laid a siege about the Castle of Terrabil. And there he pitched many pavilions, and there was great war made on both parties, and much people slain.

in haste 急いで、あわてて
all(形)(性質・程度を表わす抽象名詞を修飾して)あらん限りの、最大の、最高の
host(名)(古)軍、軍勢(=army)
siege(名)(城・都市などの)包囲攻撃
about(前)~の周りに、~を巡って
pitch(他)(テントなどを)張る
pavilion(名)(博覧会の)展示館、パビリオン、大型テント(=marquee)
make(他)(目的語に動作名詞を伴って、動詞と同じ意味をなして)(~を)する、行なう(同じ意味の動詞より、この表現のほうが1回だけの行為であることが強調される)
on(前)(近接を表わして)~に接して、~に面して ・on both sides 両側に
party(名)(集合的/単数または複数扱い)(ある目的で集まった)一行、一団、一隊
slain(動)slayの過去分詞
slay(他)(人を)殺害する(=murder)(通例受身)

そこへウーゼル王が大軍をひきいて急遽攻めよせて来た。テラビル城を包囲し、大天幕をたくさん張りめぐらした。互いに激戦を交え、多くの人々が殺された。

(17)

Then for pure anger and for great love of fair Igraine the King Uther fell sick.

for(前)(原因・理由)~の理由で、~のため(=because of)
pure(形)(まじりけがなく)純粋な、純(粋)~、~100%の
great(形)(痛みなど)激しい、強い、非常な
love(名)(異性に対する)恋愛、恋(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の ・the love of ~を愛すること
fall(自)(~の状態・関係に)なる、陥る ・fall sick 病気になる

やがてウーゼル王は一途な立腹と、美しいイグレーヌへの激しい恋心がもとで、病気になってしまった。

(18)

So came to the King Uther Sir Ulfius, a noble knight, and asked the king why he was sick.

come(自)(人・ものが)(ある場所に)到着する、やってくる(to)
to(前)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
Sir(名)サー~(英国で準男爵baronet)またはナイト爵(knight)の人の氏名と併用する敬称)
noble(形)称賛に値する、りっぱな
knight(名)(中世の)騎士(封建時代に名門の子弟がpageからsquireに昇進し武功を立ててknightとなった)
ask(他)(人に)(~を)尋ねる(+目+wh.)

それを知ったウルフィウス卿という立派な騎士が、ウーゼル王のもとへ来て、「どこがお悪いのですか」とたずねた。

(19)

‘I shall tell thee,’ said the king. ‘I am sick for anger and for love of fair Igraine that I may not be whole.’

shall(助動)(1人称を主語として、義務的感覚または強い決意を表わして)きっと~する
thee(代)(古)なんじを(に)
may(助動)(不確実な推量を表わして)~かもしれない、おそらく~であろう
whole(形)(古)(傷(病気)が)治った

「うち明けて聞かそう。予は怒りと、美しいイグレーヌへの恋心のために病気になったのだ。この病は直しようがあるまい」

(20)

‘Well, my lord,’ said Sir Ulfius, ‘I shall seek Merlin, and he shall do you remedy, that your heart shall be pleased.’

well(間)(安心・あきらめ・譲歩などを表わして)なるほど
my(代)私の
lord(名)(my Lordで呼び掛けに用いて)閣下!
seek(他)(人・ものなどを)捜す、捜し求める
Merlin(名)マーリン(Arthur王物語に出てくる魔法使いの老人で予言者)
shall(助動)(意志未来を表わして)(2、3人称を主語とする平叙文または従属節に用い、話者の意志を表わして)~させてやる
do(他)(~に)(利益・損害などを)与える、もたらす(+目+目)
remedy(名)治療、療法
heart(名)(感情、特に優しい心・人情が宿ると考えられる)心、感情
pleased(形)喜んで、満足して(=happy/⇔displeased)

「さようですな。私がひとつ、マーリンを探してまいります。王さまの御心が満足されるよう、マーリンならきっと直してくれましょう」とウルフィウス卿は言った。

(21)

So Ulfius departed, and by adventure he met Merlin in a beggar's array, and there Merlin asked Ulfius whom he sought.

by(前)(原因を表わして)~のために
adventure(名)(廃)運
in(前)(着用を表わして)~を着て、身につけて
beggar(名)こじき(=panhandler)
array(名)衣装、美装
sought(動)seekの過去形・過去分詞

ウルフィウス卿は出かけた。そして偶然にも、乞食のなりをしたマーリンに行き会った。
マーリンは「どなたをお探しじゃな」とウルフィウス卿にたずねた。

(22)

And he said he had little ado to tell him.

little(形)(不可算の名詞を修飾して)(aをつけないで否定的用法で)少ししかない、ほとんどない(⇔much)
ado(名)骨折り、めんどう

卿は「お前なんかに言う必要はない」と答えた。

(23)

‘Well,’ said Merlin, ‘I know whom thou seekest, for thou seekest Merlin; therefore seek no farther, for I am he, and if King Uther will well reward me, and be sworn unto me to fulfil my desire, that shall be his honour and profit more than mine, for I shall cause him to have all his desire.’

well(間)(安心・あきらめ・譲歩などを表わして)やれやれ、まあいいや
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+wh.)
thou(代)(2人称単数主格)なんじは、そなたは(これに伴う動詞はareがart、haveがhastとなるほかは-st、-estの語尾をつける)
therefore(副)それゆえに、従って、それ(これ)によって(=consequently)
no(副)(比較級の前に用いて)少しも~ない ・no farther もうこれ以上~ない
farther(副)(farの比較級)(距離・空間・時間が)さらに遠く、もっと先に ・no farther もうこれ以上~ない
will(助動)(意志未来を表わして)(条件節のif-clause中で主語(相手)の好意を期待して)~してくださる
well(副)十分に、よく(=thoroughly)
reward(他)(~に対して)報酬(賞、ほうび)を与える
sworn(動)swearの過去分詞
swear(他)(~を)誓う、宣誓する(+to do)
fulfil(他)(命令・条件などを)果たす、実行する
desire(名)(~を求める)欲望、欲求
shall(助動)(不可避的とみなす事態への予言を表わして)~であろう、~なるべし
honour(名)(英)=honor(名)名誉、栄誉
profit(名)得、益
more than ~ ~より多い、~を越える
mine(代)私のもの
cause(他)(人・ものに)(~)させる(+目+to do)
have(他)(~を)得る、もらう、受ける
desire(名)(通例修飾語を伴って/通例単数形で)望みのもの ・get one's desire 希望がかなう、望みどおりになる

「お前さんが誰を探しているか、わしはちゃんとわかっている。マーリンを探しているのじゃろ。それなら、もう探すには及ばん。わしがそのマーリンじゃ。もしウーゼル王がたっぷりわしにほうびをくれて、しかもわしの望みを叶えてくれると誓うなら、それは、わし自身の名誉や得になるというよりむしろ、ウーゼル王の名誉とも利益ともなるのじゃ。なぜなら、わしは王の望まれることをぜんぶ叶えて進ぜるのじゃからな」

(24)

‘All this will I undertake,’ said Ulfius, ‘that there shall be nothing reasonable but thou shalt have thy desire.’

this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
undertake(他)(仕事・義務・責任などを)引き受ける、請け負う
reasonable(形)(思考・行動など)合理的な、理にかなった、筋の通った、正当な
but(接)(従属接続詞)(否定文のあとで)(しばしばbut thatで否定の主節に対して条件節を導いて)~しないなら、~でなければ(前から訳すと「(~すれば)必ず~(する)」になる/butの節中の動詞は直説法)
shalt(助動)(古)shallの主語が2人称単数thouの時の直説法現在形)
thy(形)(古)なんじの、そなたの

「よろしい、わしにまかせておけ。道理に叶ったことならば、何事でもそなたの望みは叶えてつかわす」とウルフィウス卿は言った。

(25)

‘Well,’ said Merlin, ‘he shall have his intent and desire. And therefore,’ said Merlin, ‘ride on your way, for I will not be long behind.’

intent(名)目的、意図、意志、決意、意向
on one's way 行って、帰って
long(副)長く、長い間、久しく
behind(副)(時を表わして)遅れて

「それなら、王の願いを叶えて進ぜよう。さ、馬に乗って帰りなされ。わしはすぐあとから行くからの」とマーリンは言った。

【参考文献】
Le Morte D'Arthur Volume I (The Penguin English Library)
アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)