『偉大なるアンバーソン家の人々』

この週末は、ブルーレイで『偉大なるアンバーソン家の人々』を見た。

1942年のアメリカ映画。
監督は、『市民ケーン』『黒い罠』『審判』の天才オーソン・ウェルズ
音楽は、『市民ケーン』『地球の静止する日』『ハリーの災難』『間違えられた男』『知りすぎていた男』『めまい』『シンドバッド七回目の航海』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『マーニー』『タクシードライバー』の巨匠バーナード・ハーマン
編集は、『市民ケーン』のロバート・ワイズ
主演は、『市民ケーン』『疑惑の影』『第三の男』『トラ・トラ・トラ!』のジョゼフ・コットン
共演は、『イヴの総て』『私は告白する』『十戒』のアン・バクスター、『市民ケーン』『西部開拓史』のアグネス・ムーアヘッド。
ナレーションはオーソン・ウェルズ
僕が本作を見るのは二度目。
前回は、自宅でワインか何かを飲みながらDVDを見たのだが、酔っ払っていたのか、ロクに内容を理解出来なかった。
しかし、今回、改めて見ると、ちゃんとした映画であった。
市民ケーン』に続く監督第二作。
まあ、存在感は『市民ケーン』の方が圧倒的だが。
本作は、オーソン・ウェルズの意図に反して原版をカットされ、しかも、結末も差し替えられたらしい。
オリジナル版も見てみたいが、焼失してしまったそうだ。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
最初のナレーションが説明的で、異常に長い。
「アンダーソン家の栄華は1873年に始まった。田舎の町が都会へと変わるまで、その栄華は何年も続いた。その時代の裕福な女性達は絹をまとい、互いに面識があり、馬か馬車で見分けられた。乗合馬車が唯一の乗物。2階の窓から合図をすれば馬車は止まり、窓を閉め、身支度をして日傘を手に持ち、メイドに指図をして出て来るまで待った。全てはゆっくりとしたペースで流れていた。切り下げた前髪が女性の間で流行し、男達はストーブの煙突と呼ばれるシルクハットを着用していた。そして、ダービーハットが流行し、バケツ型からスプーン型になった。靴脱ぎが必要なブーツより短靴や編み上げ靴が好まれた。流行は箱型から剣先型へと変わった。折り目のあるズボンは誂(あつら)え仕立て、上着より少し短めだし、夜会用のコートは丈の長いものに変わった。タイトな形のズボンもずた袋のようになった。当時は優雅だった。ソリ遊びや舞踏会にお茶の会、ニューイヤーズ・パーティー、森でのピクニック、一番惜しまれるのはなくなったセレナーデの習慣。夏の夜、若者は乙女の窓辺でフルートやチェロが奏でる音楽で熱い想いを伝えた。そんなのんびりした町でもアンバーソン家はとても目立つ存在だった。」
長い長いナレーションである。
こんな長いナレーションは他に知らない。
オーソン・ウェルズ自身が語っているので、彼が関与しているのは間違いない。
一体どんな意図があったのだろうか。
ユージン・モーガンジョゼフ・コットン)は、アンバーソン家の令嬢イザベル(ドロレス・コステロ)と相思相愛であった。
だが、彼女の部屋の窓の下でセレナーデを奏でるつもりが、酔っ払って転んでベースを壊してしまう。
ユージンがアンバーソン家を訪ねても、「モーガンさんにんはお会いしません」と門前払い。
町の人々は、その噂で持ち切りだった。
やがて、青年実業家ウィルバー・ミニファーがイザベルを射止める。
ウィルバーとイザベルの間には一人息子のジョージが産まれたが、甘やかされて育ったので、暴君になった。
老人相手に暴言を吐き、殴る蹴るを繰り返す。
全寮制の学校に行っても、性格は変わらなかった。
大学2年で帰省し、彼の祖父アンバーソン少佐が開いた舞踏会に出席。
そこで、ユージンとイザベルが再会する。
見知らぬキザな男が母親と親しげに話しているのを、ジョージはにらみ付ける。
ジョージは、ユージンの一人娘ルーシー(アン・バクスター)と知り合う。
ジョージの叔父ジャック(レイ・コリンズ)は国会議員。
それから、ウィルバーの妹のファニー(アグネス・ムーアヘッド)もいた。
ユージンは自動車の発明家であった。
ジョージはルーシーに「仕事をする気はない」と話す。
彼は労働など底辺階級の者がすることだと考えていた。
将来の希望は「ヨットマンになること」だという。
ユージンは今でもイザベルが好きであった。
その日、ジョージはジャックからファニーがユージンに恋していたという話しを聞くが、ジャックはイザベルとユージンの関係については話さなかった。
ユージンはアンバーソン家に援助を求める。
ファニーはジョージにユージンのことを質問されて、ブチ切れる。
ユージンは男やもめであった。
翌日、ジョージはルーシーを誘って、馬ゾリに乗っていた。
一方、ユージン、イザベル、ファニー、ジャックが乗った自動車は故障して、立ち往生していた。
偶然、そこを通り掛かったジョージとルーシーがソリから雪上に振り落とされ、キスをしたところを、ユージンに目撃されてしまう。
馬は走り去った。
ジョージがモーガンの車を押すが、なかなか動かない。
結局、ジョージとルーシーもユージンの車に乗せてもらうハメになる。
ウィルバーが亡くなった。
アンバーソン家で葬儀が行われる。
ユージンとルーシーも駆け付けた。
ウィルバーは投資に失敗して財産をすっかりなくし、妹ファニーにも何も残さなかった。
ユージンは、おしゃれに気を遣って、めかし込むようになった。
イザベルはユージンのことが気になる。
ファニーは、それが気に食わなかった。
ユージンは立派な自動車工場にイザベル達を招く。
とうとう寄りを戻す二人。
しかし、イザベルはそのことをジョージには未だ話せないでいた。
一方、ジョージとルーシーは馬車でデートしていた。
ルーシーは未だジョージとの結婚に乗り気でなかった。
働く気がないジョージの将来を心配しているのである。
さて、アンバーソン家のディナーの席上、ジョージは「自動車など無意味だ」と発言して、ユージンを侮辱する。
が、ユージンは「ジョージが正しいかも知れない」と言う。
その後、ジョージはファニーから、イザベルとユージンが恋仲であったこと、それが町中の人々の噂の種であったことを初めて聞かされ、驚愕する。
さあ、これからどうなる?
後半は、とにかく没落するアンバーソン家のトーンが暗い。
それだけに、取って付けたようなラストが残念。

THE MAGNIFICENT AMBERSONS FILM TRAILER

『嵐が丘』を原書で読む(第28回)

(テキスト29ページ、3行目〜)

There was such anguish in the gush of grief that accompanied this raving, that my compassion made me overlook its folly, and I drew off, half angry to have listened at all, and vexed at having related my ridiculous nightmare, since it produced that agony; though why, was beyond my comprehension.

there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
such(形)(程度を表わして)(such ~ thatで)非常に~なので
anguish(名)(心身の激しい)苦痛、苦悶(くもん)、苦悩
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
gush(名)(感情の)ほとばしり ・a gush of enthusiasm ほとばしり出るような熱意
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
grief(名)(死後・後悔・絶望などによる)深い悲しみ、悲痛
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)
accompany(他)(事物が)(~に)(同時に)伴う
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)
rave(自)わめく、どなる
that(接)(副詞節を導いて)(such ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
my(代)私の
compassion(名)(切実な)同情(心)、哀れみ
make(他)(強制的に非強性的にも)(~に)(~)させる(+目+原形)
overlook(他)(過ち・欠点などを)大目に見る、見逃す
its(代)それの、あれの、その
folly(名)愚かさ、愚劣
draw off(後ろへ)下がる
half(副)半ば、半分(だけ)
at all(肯定文で)ともかく、本当に
vexed(形)いらいらして、困って
at(前)(感情の原因を表わして)~に(接して)、~を見て、聞いて、考えて
relate(他)(話・経験などを)話す、物語る
ridiculous(形)ばかげた、ばかばかしい、おかしい(=absurd)
nightmare(名)悪夢
since(接)(理由)~だから、~のゆえに
produce(他)(~を)引き起こす、招来する
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人・量をさして)あの(⇔this)
agony(名)(心・体の)激しい苦痛、もだえ苦しみ、苦悩
why(名)理由、わけ、原因
beyond(前)(程度・到達などを表わして)~の範囲を越えて
comprehension(名)理解、会得

I descended cautiously to the lower regions and landed in the back-kitchen, where a gleam of fire, raked compactly together, enabled me to rekindle my candle.

descend(自)(通例副詞句に伴って)下(くだ)る、下りる(=go down/⇔ascend)(to)
cautiously(副)<cautious(形)用心深い、慎重な、周到な
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に
lower(形)(場所・地位など)より低い(⇔upper)
region(名)(しばしば複数形で)(天地を上下に区分した)部分、境、域
land(自)(~に)(やっと)到着する、着く
back(形)背後の、後方の(⇔front) ・a back room 奥の部屋
where(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてそこに(で)
gleam(名)(通例単数形で)(きらりと見える)微光、薄光
fire(名)(暖房・料理用の)火、炉火、炭火、たき火
rack(他)引っ張る、ねじ曲げる
compactly(副)ぎっしりと、密集して
together(副)合わせて、結合して
enable(他)(物事を)(人を)(~することが)できるようにする(+目+to do)
rekindle(他)(~に)再び点火する

Nothing was stirring except a brindled, grey cat, which crept from the ashes, and saluted me with a querulous mew.

stir(自)(かすかに)動く
brindled(形)(牛・猫など)まだらの、ぶちの
grey(形)=gray(形)灰色の、ねずみ色の、グレーの
which(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)(主格・目的格の場合)そしてそれは(を)
crept(動)creepの過去形・過去分詞
creep(自)(通例副詞句を伴って)こっそりと(そっと)進む(歩く)、忍び足に行く
ash(名)(複数形で)灰殻、燃え殻
salute(他)(頭を下げたり、帽子を上げたりして)(人に)あいさつする、会釈する(with)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
querulous(形)ぶつぶつこぼす、不平たらたらの、ぐちっぽい
mew(名)ニャーニャー(の鳴き声)

Two benches, shaped in sections of a circle, nearly enclosed the hearth; on one of these I stretched myself, and Grimalkin mounted the other.

two(形)(基数の2)2の、2個の、二人の
bench(名)ベンチ、長腰掛け(通例二人以上が座れる長いす)
shaped(形)(~の)形をした
in(前)(道具・材料・表現様式などを表わして)~で、~でもって、~で作った
section(名)(ものの)部分、断片(of)
circle(名)円
enclose(他)(場所を)取り囲む、囲む
hearth(名)炉床(炉の火をたく床)
one(代)(単数形で)(特定の人(もの)の中の)一つ、1個、一人(of)
of(前)(部分を表わして)~の中の
these(代)(指示代名詞)これら(のもの、人)(⇔those)
stretch(他)(~oneselfで)大の字になる
myself(代)(再帰的に用いて)(再帰動詞の目的語に用いて)(再帰動詞とともに全体で自動詞的な意味になる)
grimalkin(名)年とったネコ
mount(他)(山・階段・王位に)登る
other(代)(the ~)(二つのうちの)ほかの一方(の人)、他方

We were both of us nodding, ere any one invaded our retreat; and then it was Joseph, shuffling down a wooden ladder that vanished in the roof, through a trap, the ascent to his garret, I suppose.

both(代)(同格に用いて)両者とも、両方とも
nod(自)こっくりする、うとうとする、居眠りする
ere(古)(接)~する前に、~しないうちに
anyone(代)=anybody(代)(否定文で用いて)だれも
invade(他)(他国を)侵略する
our(代)我々の、私たちの
retreat(名)静養先、隠れ家、避難所、潜伏場所
then(副)(しばしばandを伴って、前に続くことを示して)それから、その後で
it(代)(it is(was)~thatの構文で文の主語・(動詞または前置詞の)目的語・副詞語句を強調して)(このitの次にくるbeの時制は通例clause内の動詞の時制と一致し、clause内の動詞の人称は直前の名詞・代名詞に一致する)
Joseph(名)ジョーゼフ(男性名/愛称Jo、Joe)
shuffle(自)(副詞句を伴って)足を引きずって(のろのろ)歩く
down(前)(移動を表わして)(高所から)~を下って、~の下方に
wooden(形)木製の、木の
ladder(名)はしご(はしごの下を通るのは不吉であるという迷信があるが、これは昔、はしごが絞首刑や火刑の道具の一つとして使われ、死を暗示したことによるといわれる) ・climb down a ladder はしごを下りる
vanish(自)(目に見えていたものが)(突然)消える、見えなくなる(in)
through(前)(戸口・経路など)を通り過ぎて、~から
trap(名)(屋根・天井・床・舞台などの)はねぶた、揚げぶた
ascent(名)(通例単数形で)上り坂(道)
his(代)彼の
garret(名)屋根裏部屋(通例暗くてみすぼらしい小さな部屋)
suppose(他)(知っていることから)推測する、思う、考える(+that)

He cast a sinister look at the little flame which I had enticed to play between the ribs, swept the cat from its elevation, and bestowing himself in the vacancy, commenced the operation of stuffing a three-inch pipe with tobacco; my presence in his sanctum was evidently esteemed a piece of impudence too shameful for remark.

cast(他)(人に)(視線を)注ぐ ・He cast a quick look at his friend. 彼はちらっと友人を見やった。
sinister(形)悪意のある、邪悪な
look(名)(通例単数形で)一見、ひと目(at)
at(前)(方向・目標・目的を表わして)~を(ねらって)、~に(向かって) ・look at ~を見る
flame(名)炎、火炎
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)
entice(他)(~を)そそのかして(~)させる(=lure)(+目+to do)
play(自)(通例副詞句を伴って)(光・笑いなどが)(~に)ゆらゆら(ちらちら)する、きらめく
rib(名)肋骨状のもの
swept(動)sweepの過去形・過去分詞
sweep(他)(副詞句を伴って)(~を)(~に)さっと動かす
elevation(名)小高い所、丘
bestow(他)(古)しまう、置く
himself(代)(再帰的に用いて)(一般動詞の目的語に用いて)
vacancy(名)空間
commence(他)開始する、始める
operation(名)作業、業務、活動
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
stuff(他)(~に)(~を)詰め込む(=cram)(with)
three(形)(基数の3)3の、3個の、3人の
inch(名)インチ(長さの単位/=1/12 foot、2.54 cm)
pipe(名)(刻みたばこ用の)パイプ、きせる
with(前)(材料・中身を表わして)~で
tobacco(名)(紙巻きたばこ(cigarette)・葉巻き(cigar)と区別して)たばこ、刻みたばこ ・pipe tobacco(パイプ用)刻みたばこ
presence(名)存在、ある(いる)こと、現存(⇔absence)
sanctum(名)神聖な場所、聖所
evidently(副)(文修飾)明らかに
esteem(他)(~を)(~と)考える、思う(+目+補)
piece(名)(通例a piece of ~で)(動作・性質などの)一例
impudence(名)ずうずうしさ、厚かましさ、生意気
too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)(~には)あまりに~すぎる(for)
shameful(形)けしからぬ、不届きな
for(前)(主にtoo+形容詞・副詞+for、またはenough+forの形で)~にとっては、~するには
remark(名)注意、注目

He silently applied the tube to his lips, folded his arms, and puffed away.

silently(副)<silent(形)声(音)を出さない、無言の
apply(他)(ものを)(~に)当てる、塗る、つける、用いる
tube(名)(金属・ガラス・ゴムなどの)管、筒
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
lip(名)(複数形で)(発声器官としての)口
fold(他)(両手・両腕などを)組む、組み合わせる
puff(自)(たばこなどを)スパスパ吹かす、パッパッと吹き続ける(away)
away(副)(行動の連続を表わして)絶えず、せっせと

I let him enjoy the luxury, unannoyed; and after sucking out the last wreath, and heaving a profound sigh, he got up, and departed as solemnly as he came.

let(他)(容認・許可を表わして)(人・ものなどに)(~)させる、(人・ものなどに)(~することを)許す(+目+原形)
luxury(名)ぜいたく、おごり
un-(接頭)動詞につけてその「逆」の動作を表わす
annoyed(形)いらいらした、怒った
suck(他)(副詞句を伴って)(液体・空気などを)吸い込む、吸い取る
out(副)最後まで
wreath(名)(煙・雲などの)輪、渦巻き
heave(他)(人が)(嘆声・うなり声を)苦しそうに出す、あげる ・heave a sigh ため息をつく
profound(形)(眠り・沈黙など)深い
sigh(名)ため息、吐息 ・heave a sigh ため息をつく
get up(床などから)立ち上がる
depart(自)(人・列車などが)出発する
as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
solemnly<solemn(形)厳粛な、まじめな、重々しい、荘重な、荘厳な、謹厳な
as(接)(as ~ as ~で同程度の比較を表わして)~と同じく、~と同様に、~のように、~ほど

A more elastic footstep entered next, and now I opened my mouth for a ‘good morning,’ but closed it again, the salutation unachieved; for Hareton Earnshaw was performing his orisons, sotto voce, in a series of curses directed against every object he touched, while he rummaged a corner for a spade or shovel to dig through the drifts.

more(副)もっと、いっそう
elastic(形)しなやかな
footstep(名)歩み、足どり
enter(自)(~から)入る
next(副)(場所・時間・程度などを表わして)次に、次いで
now(副)(物語の中で)今や、そのとき、それから、次に
open(他)(ドア・目・容器・包み・手紙などを)あける、開く(⇔close、shut)
for(前)(目的・意向を表わして)~のために、~を目的として
good morning(間)(午前中のあいさつに用いて)(会った時)おはよう!、こんにちは!
close(他)(ドア・窓・目・口などを)閉じる、閉める、とざす、ふさぐ(⇔open)
salutation(名)あいさつ(の言葉)
unachieved(形)仕遂げない、成就し(てい)ない
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
Earnshaw(名)アーンショウ(Emily BrontëのWuthering Heightsに登場する、主人公Heathcliffの養家の名)
perform(他)(儀式などを)執り行なう
orison(名)(古)祈り
sotto voce(副)小声で
in(前)(行為・活動・従事を表わして)~して、~に従事して
series(名)(~の)ひと続き、(~の)連続(of)
curse(名)のろいの言葉、悪態、毒舌
direct(他)(副詞句を伴って)(注意・努力などを)(~に)向ける、注ぐ
object(名)(知覚できる)物、物体
rummage(他)(~を)くまなく捜す
corner(名)隅(すみ)、くま
for(前)(目的)(獲得・追求・期待の対象を表わして)~を得るために(の)、~を(求めて)
spade(名)踏みすき、スペード
shovel(名)(長柄で幅広の刃のついた)スコップ、シャベル(土・砂・石炭などをすくって他の場所に移すのに用いられる)
dig(自)(道具・手などで)土(穴など)を掘る(through)
drift(名)(雪・土砂などの)吹き寄せ、吹きだまり

He glanced over the back of the bench, dilating his nostrils, and thought as little of exchanging civilities with me as with my companion, the cat.

glance(自)(副詞句を伴って)(~を)ちらりと見る、ひと目見る(over)
over(前)(動作動詞とともに)~を越えて(across)
back(名)(いすの)寄りかかり、背(of)
dilate(他)(体の一部分を)広げる、ふくらませる ・dilate one's nostrils 鼻孔をふくらませる
nostril(名)鼻の穴、鼻孔
think of ~ ~のことを考える
little(副)(know、think、care、suspectなどの動詞の前に置いて)まったく~しない(=not at all)
exchange(他)(言葉・あいさつなどを)交わす、取り交わす(目的語は通例複数名詞を用いる)
civility(名)(通例複数形で)ていねいな言葉(ふるまい) ・exchange civilities ていねいな言葉であいさつを交わす
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と
companion(名)連れ

I guessed by his preparations that egress was allowed, and, leaving my hard couch, made a movement to follow him.

guess(他)(なんとなく)(~だと)思う(+that)
by(前)(判断の尺度・標準を表わして)~によって、~に従って
preparation(名)準備(すること)、用意
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)
egress(名)(特に囲いの中から)出て行くこと(⇔ingress
leave(他)(場所を)去る、出る、出発する
hard(形)硬い、固い(⇔soft)
couch(名)寝いす、カウチ、ソファー(=settee、sofa)
make(他)(目的語に動作名詞を伴って、動詞と同じ意味をなして)(~を)する、行なう
movement(名)動くこと、動き、運動、活動
follow(他)(人などを)追う

He noticed this, and thrust at an inner door with the end of his spade, intimating by an inarticulate sound, that there was the place where I must go, if I changed my locality.

notice(他)(~に)気がつく、(~を)認める
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
thrust(自)突く、突きかかる(at)
inner(形)内(側)の、内部の(⇔outer)
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
end(名)(細長いものの)端、末端、先端
intimate(他)(~ということを)それとなく知らせる、ほのめかす、暗示する
by(前)(手段・媒介を表わして)~で
inarticulate(形)(言葉など)(発音の)不明瞭な、言葉にならない
sound(名)(単数形で/通例修飾語句を伴って)声、調子
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
change(他)(場所・立場などを)転じる
locality(名)(ある)場所
【参考文献】
Wuthering Heights (Penguin Classics)』Emily Brontë・著
嵐が丘(上) (光文社古典新訳文庫)小野寺健・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

日本古典文学を原文で読む(第5回)『懐風藻』

懐風藻』について
今回は、『懐風藻』を取り上げたいと思います。
古事記』『日本書紀』『風土記』と読んで来ましたが、『懐風藻』はかなりマイナーなのではないでしょうか。
読んだことがある人も、ほとんどいないと思います。
僕は、文学史も日本史もロクに勉強しなかったので、名前すら知りませんでした。
ものすごく大雑把に言うと、『古事記』は日本最初の物語、『日本書紀』は日本最初の歴史書、『風土記』は日本最初の地理書で、『懐風藻』は日本最初の漢詩集ということになります。
漢詩の基本については、確か中学の国語で習いました。
懐風藻』は、中学や高校の国語の教科書には載っていないので、大学で国文科にでも行かないと、一生読む機会はないでしょう。
僕が在籍していた大学のシラバスを見ると、日本文学専修の日本文学研究IVA(日本漢文学の世界)という授業で本作を読むとありました。
高校日本史の教科書にも、名前だけは出て来ます。
山川の『詳説日本史』を引いてみましょう。

また、貴族や官人には漢詩文の教養が必要とされ、751(天平勝宝3)年には現存最古の漢詩集『懐風藻』が編まれ、大友皇子大津皇子長屋王らの7世紀後半以来の漢詩をおさめている。

これだけです。
簡単な記述ですね。
僕の手元にある高校生用の文学史のテキストには、もう少しだけ解説があるので、こちらも引いてみましょう。

現存する最古の漢詩集は天平勝宝三(七五一)年に成立した『懐風藻』である。『懐風藻』の詩は儀礼的な宴席での作が多く、中国の詩を形式的に模倣する傾向が強いが、大津皇子藤原宇合などには自己の心情を率直に表現した詩情豊かな作もある。

以上が本文の記述で、次は脚注です。

懐風藻 一巻。撰者は淡海三船と言われるが不明。作者六十四人の詩約百二十編を収める。五言(一句五字)の詩が大部分で、主な詩人として上記以外に大友皇子弘文天皇)・文武天皇藤原不比等長屋王藤原房前らがある。

漢詩集なので、当たり前ですが、原文は漢文です。
テキストについて
それでは、実際に読むには、どのようなテキストがあるのでしょうか。
現在の日本で流通している文庫版では、次の講談社学術文庫のものしかありません。

懐風藻 (講談社学術文庫)

懐風藻 (講談社学術文庫)

初版は2000年。
全訳注は江口孝夫(東京成徳大学日本語日本文化学科教授)。
現存する全百二十編(正確には百十六編)の本文(漢詩のみ)、訓読文、現代語訳、語釈、さらに解説を加えてあります。
原文読解
それでは、『懐風藻』本文の冒頭部分を読んでみましょう。
下に、「訓読文」「現代語訳」を記しました。
いずれも、講談社学術文庫版からの引用です。
また、書き下し文の下には、語注も付けてあります。
なお、原文はもちろん縦書きですが、ここでは、ブログの書式のため、横書きになりますが、ご了承下さい。
(1)

(訓読文)
(テキスト40ページ、1行目)
懐風藻

懐風藻(作品名)漢詩集。一巻。編者は淡海三船(おうみのみふね)説などもあるが、未詳。天平勝宝三年(七五一)成立。近江朝(六六七―六七三)以後八十数年間の六十四人の漢詩百二十編を収める。五言八句が多く、六朝(りくちょう)詩・初唐詩の影響が著しい。独創性は乏しいが、わが国最古の漢詩集として貴重。
(2)

一 淡海朝大友皇子 二首

(いち)(名)いちばんはじめ。最初。
近江(あふみ)(地名)旧国名。「東山道(とうさんだう)」八か国の一つ。今の滋賀県。「近江」は「近つ淡海(=都ニ近イ湖、スナワチ琵琶(びわ)湖」の意。「遠つ淡海(=浜名湖)」の意の「遠江(とほたふみ)(静岡県)」に対した名。江州(ごうしゅう)。=淡海(あふみ)
大友皇子(おほとものわうじ)(人名)(六四八―六七二)天智(てんじ)天皇の第一皇子。天智天皇没後、近江(おうみ)朝廷の中心的存在となったが、壬申(じんしん)の乱で大海人皇子(おおあまのおうじ)に敗れて、縊死(いし)。明治三年(一八七〇)、「弘文天皇」の諡号(しごう)を追贈された。「懐風藻」に漢詩二首を残す。
(-しゅ)(接尾)漢詩や和歌を数える。
(3)

皇太子は淡海帝の長子なり。

(係助)特に提示する意を示す。(主語のように用いる)。~は。
淡海帝(あふみてい)第三十八代の天智天皇大化改新を敢行された中大兄皇子小倉百人一首の第一首目に登載されている天皇
(格助)連体修飾語をつくる。/所有を表す。~が持っている。~のものである。
なり(助動ナリ型)断定を表す。~である。~だ。

(現代語訳)
大友皇子天智天皇の第一皇子である。

(4)

魁岸奇偉、風範弘深、眼中精耀、顧盼煒□。

魁岸奇偉(くわいがんきゐ)優れて大きく、立派な体格。
風範弘深(ふうはんこうしん)風采が広大で深遠なこと。魁岸奇偉の外面性に対し、内面性を述べた。
眼中精耀(せいえう)ひとみがあざやかに輝いていること。
顧盼煒□(こべんゐえふ)振り返り見る目元が美しく輝くこと。

逞ましく立派な身体つきで、風格といい器量といい、ともに広く大きく、眼はあざやかに輝いて、振り返る目もとは美しかった。

(5)

唐の使、劉徳高見て異なりとして曰く、「この皇子、風骨世間の人に似ず、実に此の国の分にあらず」と。

(たう)中国の統一王朝(六一八―九〇七)。当時世界最大の文明国で、日本からも遣唐使を派遣した。安史の乱以後衰え、のち、朱全忠に滅ぼされた。都は長安
(格助)連体修飾語をつくる。/所属を表す。~のうちの。
つかひ(使ひ)(名)使者。
見る(みる)(他マ上一)見る。目にとめる。
(格助)ある事が起こって、次に後の事が起こることを表す。~て、それから。そうして。
(こと)(形動ナリ)格別である。特別である。
(格助)言ったり、思ったりする内容を受けていう。引用の「と」。
(自サ変)さまざまの他の自動詞の代用とする。
曰く(いはく)言うこと。言うことには。言うよう。
この 自分に最も近いものを指示する語。この。ここの。
皇子(みこ)(名)天皇の子または子孫。男女ともに用いる。
風骨(ふうこつ)風采骨柄。風姿・風容などとも。
世間(せけん)(名)世の中。人の世。また、世の中の人。
(ひと)(名)人間。
(格助)動作の対象を示す。~に。~に対して。
似る(にる)(自ナ上一)形態や性質がほとんど同じように見える。
(助動特殊型)打消の意を表す。~ない。
実に(まことに)(副)本当に。まったく。
(くに)(名)国土。国家。日本国。
(ぶん)(名)身のほど。分際。
(格助)資格を示す。~で。~として。
あり(自ラ変)(物事が)ある。

唐からの使者、劉徳高は一目見て、並外れた偉い人物と見てこういった。
「この皇子の風采・骨柄をみると世間並みの人ではない。日本の国などに生きる人ではない」と。

(6)

かつて夜夢みらく、天中洞啓し、朱衣の老翁、日を捧げて至り、げて王子に授く。

かつて(副)(肯定文に用いて)かねて。今まで一度も。ついぞ。
(よる)(名)日没から日の出までの間。
(ゆめ)(名)睡眠中の幻覚。ゆめ。
みる(他マ上一)見る。目にとめる。
-らく 連体形末尾が「る」となる語のク語法の語尾。その語を名詞化する。文末では詠嘆の意を添える。~すること。~することよ。
天中洞啓(てんちゅうとうけい)天の一角がからりと開け、かぐや姫の昇天や、仏の来迎図のように、天から下界にくだるような趣を表現した。古代人は「天つ風雲の通ひ路」などとも表現した。
(他サ変)ある動作を起こす。ある行為をする。
(格助)性質・状態を示す。
(おきな)(名)年とった男性。老人。
(ひ)(名)太陽。日輪。また、太陽の光・熱。
(格助)対象としてとりあげたものを示す。~を。
捧ぐ(ささぐ)(他ガ下二)手に持って高くさしあげる。
至る(いたる)(自ラ四)やって来る。~になる。
かかぐ(他ガ下二)高く上げる。さし上げる。

皇子はある夜夢をみた。天の中心ががらりと抜けて穴があき、朱い衣を着た老人が太陽を捧げもって、皇子に奉った。

(7)

忽ち人有り、腋底より出で来て、すなはち奪ひ将ち去ると。

忽ち(たちまち)(副)すぐさま。そのまま。
(ひと)(名)他の人。よその人。
あり(自ラ変)(人・動物が)いる。
腋底 腋の下。「掖庭」の誤りとし、宮間のわきの小間ととる説もある。
より(格助)動作・作用の時間的・空間的な起点を示す。~から。
出で来(いでく)(自カ変)出て来る。現れる。
すなはち(副)すぐに。たちまち。ただちに。
奪ふ(うばふ)(他ハ四)無理に自分のものにしてしまう。取り上げる。
もつ(他タ四)手にする。たずさえる。身につける。
去る(さる)(自ラ四)離れて行く。遠ざかる。

するとふとだれかが腋の下の方に現われて、すぐに太陽を横取りして行ってしまった。

(8)

覚めて驚異し、具に藤原内大臣に語る。

覚む(さむ)(自マ下二)眠りからさめる。起きる。
具さ(つぶさ)(形動ナリ)くわしくていねいなさま。詳細なさま。
藤原内大臣 藤原鎌足のこと。内大臣は令外の官で、左右大臣の上に置かれていた。
語る(かたる)(他ラ四)ことばで相手に伝える。話す。

驚いて目をさまし、怪しさのあまりに内大臣藤原鎌足公に事こまかに、この旨をお話しになった。

(9)

歎じて曰く、「恐らくは聖朝万歲の後、巨猾の間釁あらむ。然れども、臣平生曰く、『あにかくのごとき事あらむや』と。臣聞く、天道親なし。ただ善をこれ輔くと。願はくは大王勤めて徳を修めよ。災異憂ふるに足らざるなり。臣に息女あり。願はくは後庭に納れて、以て箕帚の妾に充てむ」と。

恐らくは(おそらくは)たぶん。大方。
聖朝万歲 聖朝は天皇の朝廷。万歳は崩御のことを謹んで、天子の御寿万歳と申した。
(格助)連体修飾語をつくる。/時を示す。
(のち)(名)あと。次。以後。
巨猾(きよくわつ)の間釁(かんきん) 巨猾は大悪人。間釁の間はうかがう。釁はすき間。乗ずべき間隙を狙う意。
(助動マ四型)推量を表す。~だろう。~でしょう。
然れども(しかれども)(接)そうではあるが。しかしながら。
(おみ)(名)家来。臣下。
あに(副)(下に反語表現を伴って)どうして。なんで。
かく(副)このように。こう。
(格助)連体修飾語をつくる。/「ごと(し)」「まにまに」「から」「むた」などの形式語を下に伴う。
ごとし(助動ク型)ある一つの事実と他の事実とが同類・類似のものである意を表す。~ようだ。~と同じ。
(こと)(名)世の中に起こる事柄。現象。
(係助)反語の意を表す。~(であろう)か、いや~で(あり)は(し)ない。
聞く(きく)(他カ四)音声を耳にうけて知覚する。聞いてそれと思う。
天道親なし 天は人に対して親疎の意をつけない。えこひいきをしないの意。
ただ(副)それ一つに限っているさま。こればかり。それだけ。ただ。他になく。
(ぜん)(名)正しいこと。よいこと。理にかなったこと。
これ(代)(漢文の助字「之」「是」などを「これ」と訓読したことから)漢文訓読体の文章で、語調をととのえ、または強める語。
輔く(たすく)(他カ下二)事をしている人に力を添える。助ける。補佐する。助力する。
願はくは(ねがはくは)願うことには。どうか。なにとぞ。
大王(おほきみ)(名)親王・皇女・諸王の敬称。のちにはもっぱら諸王の称。
勤む(つとむ)(他マ下二)努力して行う。
(とく)(名)心が正しくて、すべての行為が人の道にかなっていること。道徳。
修む(をさむ)(他マ下二)学芸・礼儀などを身につける。習得する。
(間助)命令の意を強く確かめる。
憂ふ(うれふ)(他ハ下二)心をいためる。心配する。
足る(たる)(自ラ四)相応している。ふさわしい。また、価値がある。
息女(そくぢょ)むすめ。また、他人のむすめの敬称。
後庭(こうてい)後宮。奥御殿。女中の部屋。
(格助)場所を表す。~に。~で。
いる(他ラ下二)中に入れる。
以て(もって)(接)それによって。そのために。それゆえ。であるから。
箕帚(きそう)の妾 箕はちりとり、帚はほうき。妾は妻に対する語であるが、女の召使いの意もある。ここでは妻の意をへりくだって妾と表現した。
あつ(他タ下二)身に負わせる。
(助動マ四型)勧誘を表す。~しないか。

内大臣は歎きながら、「恐らく天智天皇崩御ののちに、悪賢い者が皇位の隙をねらうでしょう。しかしわたしは普段申し上げておりました。『どうしてこんな事が起りえましょう』と。わたしはこう聞いております。天の道は人に対して公平であり、善を行う者だけを助けるのです。どうか大王さま徳を積まれますようお努めください。災害変異などご心配に及びません。わたしに娘がおります。どうか後宮に召し入れて妻にし、身の廻りのお世話を命じて下さい」と申し上げた。

(10)

遂に姻戚を結んで以てこれを親愛す。

遂に(つひに)(副)結局。終わりに。最後に。とうとう。
結ぶ(むすぶ)(他バ四)契る。約束する。
これ(代)人代名詞/近称。この人。

そこで藤原氏と親戚関係を結び、親愛の仲になっていった。

(11)

年甫めて弱冠、太政大臣を拝す。百揆を総べて以てこれを試む。

(とし)(名)年齢。よわい。
はじめて(副)最近。
弱冠(じゃくくゎん)(名)(中国の周代の制で、男子の二十歳を「弱」といい、元服して冠をかぶるところから)男子の二十歳の称。また、青年に達すること。
太政大臣 太政官の最高職、内閣総理大臣にあたる。ただし天皇の師範となり、国内の手本となる人で、その人がいなければ置かないこともあった。大友皇子は最初の太政大臣であった。
拝す(はいす)(他サ変)官を授ける。
百揆を総べ 多くの官掌をはかりすべる。
これ(代)近接の指示代名詞。話し手に近い事物・場所などをさす。/事物をさす。このもの。これから。
試む(こころむ)(他マ下二)「こころみる」の転。

息子がようやく二十歳になられたとき、太政大臣の要職を拝命し、もろもろの政治を取りはかられた。

(12)

皇子博学多通、文武の材幹あり。

博学多通 博学で色々な方面にも通じている。
文武の材幹 文芸武芸の才能。

息子は博学で、各種の方面に通じ、文芸武芸の才能にめぐまれていた。

(13)

始めて万機に親しむ。群下畏れて粛然たらざることなし。

始めて(はじめて)(副)最初に。初めて。
万機 よろずの政治。
畏る(おそる)(自ラ下二)畏敬する。
粛然たらざることなし 慎しみ改まらない者はいなかった。

はじめて政治を自分で執り行うようになったとき、多くの臣下たちは恐れ服し、慎み畏まらない者はいなかった。

(14)

年二十三にして立ちて皇太子となる。

にして(時を表す)~で。~の時に。
立つ(たつ)(自タ四)高い地位・位につく。
(格助)~の状態になる意を表す。変化の結果を示す。~と。
なる(自ラ四)(それまでと違った状態やものに)なる。成長する。変化する。

年二十三のときに皇太子になられた。

(15)

広く学士沙宅紹明、塔本春初、吉太尚、許率母、木素貴子等を延きて、以て賓客となす。

広し(ひろし)(形ク)数が多い。栄えている。
学士(がくし)(名)令制で、皇太子に儒学を講じる学者。
沙宅紹明(さたくせうめい) 百済から帰化した者。法律に長じており、大錦下の位をえた。
塔本春初(たふほんしゅんしょ) 百済から帰化した者。兵法に長じ、大山下の位をえた。
吉太尚(きつたいしやう) 百済から帰化した者。医学に長じ、小山上の位をえた。
許率母(きょそつも) 五経に明らかであり、小山上の位をうけた。
木素貴子(もくそきし) 百済から帰化した者。兵法に長じ、大山下の位をえた。
(-ら)(接尾)(主として人を表す体言に付いて)法的である意を表す。
ひく(他カ四)誘う。心をひく。うながす。招く。
賓客(ひんかく)(名)客。客人。
なす(他サ四)(官職に)任命する。

広く学者沙宅紹明、塔本春初、吉太尚、許率母、木素貴子などを招いて顧問の客員とした。

(16)

太子の天性明悟、雅より博古を愛す。

太子(たいし)(名)天皇の位を継ぐべき皇子。皇太子。春の宮。東宮
天性(てんせい)(名)天から授かった性質。生まれつき。
明悟 さとりの早いこと。
もとより(副)元来。もともと。
博古(はくこ)ひろく古典に通じていること。
愛す(あいす)(他サ変)たいせつにする。執着する。

皇子は生まれつき悟りが早く、元来ひろく古事に興味を持たれていた。

(17)

筆を下せば章と成り、言を出せば論となる。

(ふで)(名)紙面上に文字や絵を書く筆記具。ふで。
下す(くだす)(他サ四)(「筆をくだす」の形で)書く。
(接助)その事に続いて、次に述べる事が起こったことを表す。~すると。
(こと)(名)ことば。ことばで言い表したもの。
出だす(いだす)声に出す。歌う。
(ろん)(名)議論。言い争い。

筆を執れば文章となり、ことばを出すとすぐれた論となった。

(18)

時に議する者その洪学を歎ず。

(とき)(名)そのころ。当時。
(格助)時を示す。~(とき)に。
(もの)(名)人。
その 近い前に話題にのぼった事物であることを示す語。その。あの。
洪学(こうがく)博学と同じ。

当時の議論の相手となった者は皇子の博学に感嘆していた。

(19)

いまだ幾ばくならずして文藻日に新たなり。

いまだ(副)(下に打消の表現を伴って)まだ。今でもまだ。
いくばく(副)(「いくばくも」の形で、下に打消の語を伴って)いくらも。
なる(自ラ四)その時期、あるいは時刻にいたる。
して(接助)逆説の条件で下に続ける。~のに。
文藻(ぶんそう)詩文の才。
(ひ)(名)一日。日。
新た(あらた)(形動ナリ)新しいさま。改まるさま。

学問を始められてからまだ日が浅いのに、詩文の才能は日に日にみがかれていった。

(20)

壬申の年の乱に会ひて、天命遂げず。
時に年二十五。

壬申の年の乱 天智天皇の死後、六七二年に、大友皇子大海人皇子との間で争った戦。大海人皇子が勝って即位、四十代天武天皇となった。
会ふ(あふ)(自ハ四)あることの起こる時にちょうどそこにいる。うまく時期にめぐり合う。
天命 天から与えられた運命。
遂ぐ(とぐ)(他ガ下二)なしとげる。目的をはたす。

壬申の乱にあい、天から与えられた運命を全うすることができないで、二十五歳の年齢でこの世を去られた。

(21)

1 宴に侍す

(うたげ)(名)酒宴。宴会。
(22)

皇明 日月と光り

皇明(くわうめい)天皇のご威光。天皇は父の天智天皇をさしている。
(格助)比喩(ひゆ)を表す。~のように。~と同じに。
てる(自ラ四)(日や月が)光を放つ。輝く。

天子の威光は日月の如く輝き

(23)

帝徳 天地に載つ

帝徳 天皇のご聖徳。帝も天智天皇をさしている。
 載は「みつ」と読み、満ちあふれるの意にとったが、「のす」と読み、おおいのせるの意にとることもできる。

天子の聖徳は天地に満ち溢る

(24)

三才 ならびに泰昌

三才 天地人の三つをいう。
ならびに(接)二つの事物を並べ挙げる。および。また。それと同時に。
泰昌(たいしやう)太平で栄えるの意。

天・地・人ともに太平で栄え

(25)

万国 臣義を表す

臣義 臣下として仕える礼儀。
表す(あらはす)(他サ四)隠れているものを表面に出す。見えるようにする。

四方の国は臣下の礼をつくす

(26)

2 懷ひを述ぶ

おもひ(名)思うこと。考え。思慮。
述ぶ(のぶ)(他バ下二)話す。言う。説明する。文章に書く。
(27)

道徳 天訓を承け

道徳 人の守っていかなければならない理法。道。
天訓 天の訓え、天のさだめた法。
承く(うく)(他カ下二)(命令・頼み・願いごとなどを)承知する。聞き入れる。承諾する。

天の教えをいただいてこの世の教えとし

(28)

塩梅 真宰に寄す

塩梅(えんばい)「あんばい」とも読む。ほどよく加減する。塩かげん。適正な政治を行う。
真宰(しんさい)天の異称。
寄す(よす)(他サ下二)任せる。委任する。

天の教えに基づき正しく国家を運営する

(29)

羞づらくは監撫の術なきことを

羞づ(はづ)(自ダ下二)恥ずかしく思う。恥じらう。
監撫(かんぶ)の術 監国撫軍の略。太子が従軍するのを撫軍といい、本国に残って国を治めるのを監国という。ここでは太政大臣としての仕事。
なし(形ク)存在しない。ない。
こと(名)ことのようす。さま。

恥ずかしい事だが私は大臣の器ではない

(30)

安んぞ能く四海に臨まん

安んぞ(いづくんぞ)(副)(下に推量の表現を伴って)反語、まれに疑問の意に用いられ、係り結びに準じて連体形で結ぶ。どうして~ようか(~ない)。
能く(よく)(副)上手に。巧みに。
四海(しかい)(名)天下。世の中。=四つの海。
臨む(のぞむ)(自マ四)対する。直面する。

どのように天下に臨んだらよいのだろう

【参考文献】
1995年度 二文.pdf - Google ドライブ
詳説日本史B 改訂版 [日B309] 文部科学省検定済教科書 【81山川/日B309】笹山晴生佐藤信五味文彦、高埜利彦・著(山川出版社
精選日本文学史』(明治書院
旺文社古語辞典 第10版 増補版』(旺文社)

『私はゾンビと歩いた!』

この週末は、ブルーレイで『私はゾンビと歩いた!』を見た。

私はゾンビと歩いた! Blu-ray

私はゾンビと歩いた! Blu-ray

  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1943年のアメリカ映画。
監督は、『キャット・ピープル(1942)』のジャック・ターナー
製作は、『キャット・ピープル(1942)』のヴァル・リュートン。
脚本は、『狼男(1941)』のカート・シオドマク。
音楽は、『赤ちゃん教育』のロイ・ウェッブ。
編集は、後に『大地震』を監督するマーク・ロブソン
タイトルが如何にもキワモノ臭いが、そこまで変な映画ではない。
ただ、人種差別色が非常に強いが。
本作は、シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』が下敷きになっているらしい。
高慢と偏見とゾンビ』みたいなもんか。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
ベートーヴェンの『運命』の冒頭みたいな音楽から始まる。
しかし、次第に穏やかなメロディーに変わる。
タイトル・バックは、波光きらめく浜辺。
若い女性の「私はゾンビと歩いていたの」というナレーション。
彼女の回想という形で、物語は始まる。
カナダ人看護婦のベッツィー・カーネルは、西インド諸島で砂糖プランテーションを経営するポール・ホランドに雇われて、彼の病気の妻ジェシカの世話をすることになった。
船に乗って西インド諸島へ向かうベッツィー。
船内で、ホランドがベッツィーに話し掛けて来る。
「海は美しくない。腐敗している。」
島に着く。
現地人がいっぱいいる。
馬車を操る黒人から、「この島に我々を連れて来たのもホランド」と聞かされるベッツィー。
黒人の祖先は皆、奴隷であった。
ホランドの屋敷に着いた。
屋敷には人の気配がない。
ホランドの弟ウェズリー・ランドから、「今夜の食事は二人だけ」と聞かされる。
この家には、他にホランドと、ホランド及びランドの母親、それにホランドの病気の妻ジェシカがいた。
ホランドとランドは兄弟だが、父親が異なるので、別々の名字なのであった。
ジャングルから太鼓の音が聞こえて来る。
これが、砂糖工場の合図なのだという。
彼ら白人の態度に、明らかに現地人の風俗を見下していることが分かる。
そこへホランドが戻って来る。
しかし、何故かベッツィーをジェシカに会わせてくれないのであった。
夜、女性が一人で庭を歩いている。
ジェシカであった。
そのジェシカが入った部屋から、すすり泣く声が聞こえる。
ベッツィーは気になって、見に行った。
部屋の中は塔になっていて、真っ暗である。
らせん階段を昇るジェシカの後を追うベッツィー。
ジェシカは、能面のような表情で、無言でジェシカに迫って来る。
ベッツィーは恐怖のあまり、叫び声を上げてしまい、それを聞いたホランドが飛んで来る。
女性の泣き声が聞こえたと訴えるベッツィーに、それは黒人家政婦エルマの妹の出産だと応えるホランド
奴隷は生きることが苦痛だから、子供が産まれると泣くというのだ。
そのエルマから、「奥様は大病で神経をやられた」と聞かされるベッツィー。
ホランドは、ベッツィーに「派遣会社に臆病な看護婦は要らないと言った」と皮肉を述べつつ、「妻は心の病気だ」と語る。
医師がやって来て、ジェシカのことを「美しいゾンビだ。生きる屍だ」と言う。
ひどい熱病で脊髄をやられ、自分の意志では何も出来なくなったのだという。
何か、我々の世代は、ゾンビと言えば、例のゾンビ映画に出て来るように、死者が甦ったものだと思っているが、本作のゾンビは死んでいない。
で、ベッツィーが非番の日。
町へ出ようとすると、ランドとばったり会う。
ランドは「自分が案内してあげよう」と言う。
カフェでは、黒人が朗々とホランド家を詞にした歌をうたっている。
曰く、「ホランドが妻を閉じ込め、ランドが妻に惚れた」と。
それを聴いたランドは、急いで歌を止めさせる。
ランドは、ベッツィーに「ホランドの本性はそのうち分かる」と告げる。
ランドは、そのまま酔い潰れて眠ってしまう。
そこへランドの母親がやって来る。
「もう何も隠す必要はないわね」と。
ランドはアル中であった。
ランドの母は、ベッツィーに「食卓のウイスキーを隠して下さい」と頼む。
しかし、食卓でホランドからは、「君は妻の看護婦だ。弟の世話は要らない」と断られる。
食卓に酒がないことから、ランドとホランドの兄弟ゲンカが始まる。
それが、ジェシカを巡っての口論に発展する。
ホランドは、「妻が正気の時は、(弟と)ひどいケンカをした」とベッツィーに告白する。
医師はホランドに、「奥様を治すにはショック療法しかない」と告げる。
治るかも知れないが、死ぬかも知れない。
ホランドはようやく治療を受けさせることに同意するが、結局、効果はなかった。
で、ランドは今でもジェシカを愛しているのだという。
一方、ベッツィーはホランドを愛しているのであった。
何のメロドラマか。
エルマは「ブードゥーの医者が奥様の病気を治せる」と言う。
しかしながら、白人にとっては、ブードゥー教など野蛮人の邪教であるから、到底受け入れることは出来ない。
だが、ベッツィーは、愛するホランドの奥様を治すために、ブードゥーの聖地フンフォートへジェシカを連れて行く決心をした。
ホランドの母は、「フンフォートは危険なところ。彼らは野蛮人よ」とのたまう。
ああ、自分達が迫害しておいて、何と差別的なんだろう。
気分が悪い。
で、結局、ベッツィーはジェシカを連れて屋敷を出た。
さあ、これからどうなる?
一応、結末は映画らしくは終わる。
ただ、そんなに完成度の高い映画でもないな。
ジェーン・エア』の要素は、うまく取り入れているとは思う。

I Walked With A Zombie Trailer

『アパッチ砦』

連休中は、ブルーレイで『アパッチ砦』を見た。

アパッチ砦 Blu-ray

アパッチ砦 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1948年のアメリカ映画。
監督は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『黄色いリボン』『幌馬車』『西部開拓史』の巨匠ジョン・フォード
製作は、『キングコング』『黄色いリボン』『幌馬車』のメリアン・C・クーパー。
主演は、『赤い河』『黄色いリボン』『ホンドー』『アラスカ魂』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『大列車強盗(1973)』『マックQ』『オレゴン魂』の大スター、ジョン・ウェインと、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『戦争と平和(1956)』『間違えられた男』『十二人の怒れる男』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『ウエスタン』の大スター、ヘンリー・フォンダ
共演は、『黄色いリボン』のジョン・エイガー、『007 ロシアより愛をこめて』のペドロ・アルメンダリス、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『幌馬車』『静かなる男』のワード・ボンド、『黄色いリボン』『静かなる男』のヴィクター・マクラグレン。
モノクロ、スタンダード・サイズ。
勇ましいテーマ音楽。
画質は良くない。
荒野を走る馬車。
乗っているのはサースデイ中佐(ヘンリー・フォンダ)と、その娘フィラデルフィアシャーリー・テンプル)。
向かっているのはアパッチ砦。
サースデイは、南北戦争で失策を犯し、将軍から中佐に格下げされ、辺境のこの地に左遷されたのであった。
中継地点で、サースデイは馬を用意するように命じる。
しかし、娘がいるから馬は無理。
士官学校出の若いマイケル・オローク中尉(ジョン・エイガー)が同行することになる。
結局、馬車で移動することになったフィラデルフィアは、車内からずっとマイケルのことを見ている。
気に入ったのだ。
アパッチ砦では文明的な生活が送られていた。
サースディが到着すると、ダンス・パーティの真っ最中。
迎え出たヨーク大尉(ジョン・ウェイン)に、「何のパーティか?」と尋ねると、「ジョージ・ワシントン将軍の誕生パーティです。」
マイケルは、父親であるオローク軍曹(ワード・ボンド)と再会。
母親のメアリーは、息子のことを「まあ、立派になって!」と。
翌朝、マイケルはサースデイの家に挨拶に行くが、出迎えたのは娘のフィラデルフィア
マイケルが自分を訪ねて来たのではないと知って、フィラデルフィアは不機嫌になる。
マイケルは、ヨークから、「今日からお前は俺の部隊の所属だ」と言われる。
サースデイは士官を召集する。
辺境の地だから、服装も規律もたるんでいると叱責。
きちんとしているのは、(士官学校出の)オローク中尉だけだと。
サースデイは、アパッチ族を臆病な種族だと思っていた。
しかし、ヨークは「彼らは臆病ではない」と主張し、ヨークと対立する。
サースデイは、「こんな所へ流されたが、このままではおられん」と思っている。
物語は、ジョン・ウェインの作品らしく、ゆったりと進む。
フィラデルフィアは、家財道具が届かず、困って、母親の親友であるコリングウッド夫人を訪ねる。
コリングウッド夫人は、「オローク夫人に頼みましょう」と言う。
こうして、フィラデルフィアは、マイケルの母親とも知り合う。
マイケルは士官学校出だから厳しいが、誰も付いて行けない。
まず、兵士らしい恰好が出来ていない。
一方、フィラデルフィアはオローク夫人に手伝ってもらい、部屋をキレイにする。
スペイン語を話すお手伝いも雇った。
サースデイが帰宅したところに、グラント砦から警報が届く。
フィラデルフィアは、オローク家に夕食へ。
ヨークもいる。
家の前で歌う兵士。
うまい!
マイケルは、フィラデルフィアを馬の遠乗りに誘う。
翌朝、民間人兵士達を集めて乗馬の訓練が行われている。
鞍がない。
慣れない者が乗って、暴れて突っ走る馬達。
連中は馬にもうまく乗れない。
一方、マイケルはフィラデルフィアと遠乗り。
そこはアパッチ族の領域。
電信の線がよく切れるとフィラデルフィアに話すマイケル。
サースデイは、娘がマイケルと遠乗りに行ったと知って激怒。
マイケルは、アパッチ族に焼き討ちに合った馬車の残骸と遺体を発見し、フィラデルフィアに「見るな!」
急いで逃げ帰る二人。
サースデイに、馬車が焼き討ちに合ったと報告するマイケル。
サースデイは、軍人としてのマイケルの報告は完璧だと評価する。
しかし、「許可なく娘を連れ出すとは! 二度と娘を連れ出すな! 近付くことも許さん! 父親としての命令だ!」と厳命する。
まあ、僕も、結婚する前に現細君のご実家に電話をしてお父さんが出ると、いつもえらく冷たくあしらわれたからな。
今では、正月に実家に挨拶に行くと談笑しているが。
気持ちは分かる。
で、サースデイは、ヨークの意見も階級差を理由にことごとく却下。
こういう原理主義の上司はやりにくくてかなわんね。
今のウチの社長は現場主義で、こういう人とは真逆だから、非常にありがたいが。
サースデイは、焼き討ちされた馬車の遺体の回収と、電線の修理を命じる。
危険な任務なのに、小隊を出さず、数名の精鋭部隊で行けと言う。
もちろん、アパッチ族と対決するハメになるのだが。
さあ、これからどうなる?
ジョン・フォードの他の作品でも見られた馬が大河を渡るシーンは撮影が大変だっただろう。
例によって、馬が疾走するシーンはスゴイ迫力で、クロサワ映画の手本だ。
クライマックスの合戦シーンが、これまた素晴らしい。
サースデイは、「相手は未開の野蛮人だ」とか、「お前らは豚だ」とか、今なら絶対に審査を通らないような差別的なセリフを吐くが、これが、つい最近までの大多数のアメリカ白人の本音だろう。
ダンス・ウィズ・ウルブズ』なんていう、さも「反省しました」みたいな、ヒドイ偽善映画もあったが。
しかし、西部劇と言うと、僕が子供の頃、親父がよくテレビで見ていたが、酒場でならず者とガンマンがケンカして撃ち合うみたいなイメージが強いが、ジョン・フォードの作品にはそういう描写はない。
何と言うか、古典の風格がある。
まあ、しかし、似たようなキャストと内容の作品ばかりで、何本も見ると混乱する。
細君も、既に区別が付かないと言っている。
それにしても、ヘンリー・フォンダは、よくこんな気の毒なくらいの悪役を引き受けたな。

Fort Apache (1948) Official Trailer - John Wayne, Henry Fonda Western Movie HD

『幸福な生活について』を原文で読む(第4回)

(テキスト12ページ、8行目~)

5 Nunc vero stat contra rationem defensor mali sui populus.

nunc(副)しかし現状(実際)は
vērō(副)(奪格)本当に、実際に
stō -āre stetī statum(自)立つ、立っている
contrā(前)(+対格)~に反対して、~とは逆に
ratiōnis(女)理性、分別
defensor -ōris(男)擁護者、弁護者
malun
suī(代)(再帰)(属格)(奪格:se)彼(彼女・それ・彼ら・それら)自身
populus -ī(男)民衆、世間

Itaque id evenit quod in comitiis, in quibus eos factos esse praetores idem qui fecere mirantur, cum se mobilis favor circumegit: eadem probamus, eadem reprehendimus; hic exitus est omnis judicii, in quo secundum plures datur.

itaque(副)従って、それゆえに
id(中)(単)(主格)(対格)→is
is ea id(代)(指示詞)彼、彼女、それ
ēveniō -īre -vēnī -ventum(自)起こる、生じる
quod(接)~ということが(を)
in(前)(+奪格)(空間的)~の中に、~において、~に
comitia -ōrum(中)(複)(ローマの)民会(立法・裁判・公職者の選出を行なった)
quī quae quod(代)(関係代名詞)(+直説法)(事実関係)~するところの(人・もの)
factum -ī(中)結果
esse不定法)(現在)→sum
sum esse fuī(自)(繋辞として)~である
praetor -ōris(男)指導者、頭領
īdem eadem idem(代)(指示詞)同じ人(もの)、同様のもの
facere(自)→facio
faciō -cere fēcī factum(他)指定する、任命する(+2個の対格)
ror -ārī -ātus sum(他)(形式受動相)驚く、当惑(狼狽)する(+対格+不定法)
cum(接)(+直説法)(真に時を示す)~の時に
mōbilis -is -e(副)変わりやすい、気まぐれな
favor -ōris(男)好意、支持
circumēgī(完了)→circumago
circumagō -ere -ēgī -actum(他)気持(考え)を変えさせる
probō -āre -āvī -ātum(他)賞賛すべきものと認めさせる、推薦する
reprehendō -ere -hendī -hensum(他)非難する、とがめる、責める
his haec hoc(指示代名詞)今述べたばかりのこと
exitus -ū(男)結果
est(3人称)(単数)(直説法)(現在)→sum
omnis -ie -e(形)(単数)全体の
jūdicium -ī(中)判断、評価
in(前)(+奪格)(ある状況・状態など)~で、~において、~のもとで
quis quis quid(代)(関係詞)~はだれでも(何でも)
secundum(前)(+対格)~に従って、~と一致して
plūrēs -ium(男)(女)(複)より多くの人々
dare dedī datum(他)与える、提供する、授ける

II. 1 Cum de beata vita agetur, non est quod mihi illud discessionum more respondeas: « Haec pars major esse videtur » ; ideo enim pejor est.

cum(接)(+接続法)(譲歩)たとえ~であっても、~にもかかわらず
(前)(+奪格)(関連・限定)~に関して、~について
beātus -a -um(形)(完了分詞)幸福な、祝福された、恵まれた
vīta -ae(女)生活、暮らしぶり
agō -ere ēgī actum(他)表現する、述べる
nōn(副)=nē(副)(+命令法/+接続法)(命令)~するな
quod(接)est quod(+接続法)~というのには理由がある
mihi(人称代名詞)(与格)→ego
egō(与格:mihi)(人称代名詞)(一人称)私
ille illa illud(代)(指示詞)例の(周知の)人(もの、こと)
discessiōnis(女)(元老院における)採決
morē(副)愚かにも
respondeō -ēre -spondī -sponsum(他)答える、(手紙で)返事をする(+与格)
hic haec hoc(形)(指示詞)この、ここの、ここにある
pars partis(女)一方、側
mājor -or -us(形)(比較級)より多数(大量)の
videō -ēre vīdī vīsum(他)(受動)~らしく見える、~と思われる、~と考えられる(+不定法)
ideō(副)idcirco
idcircō(副)それゆえに、その理由で
enim(接)なぜならば、というのも
pējor -or -us(形)(比較級)(原級:malus)より悪い

Non tam bene cum rebus humanis agitur ut meliora pluribus placeant: argumentum pessimi turba est.

nōn(副)~でない
tam(副)この(その)ように、これ(それ)ほどに
bene(副)(比較級:melius)(最上級:optimē)よく、申し分なく
rēs reī(女)物、物事、事柄
hūmānus -a -um(形)人間の ・res humanae 人間界のできごと、人生
agō -ere ēgī actum(他)(受動・再帰)動く
ut(接)(+接続法)(副詞節を導く)その結果として~/(ita、sic、adeo、tantus、tamなどと呼応して)
melior -or -us(形)(比較級)よりよい、(より)すぐれた、よりふさわしい
plūs plūris(中)(比較級)より多くの数(量)
placeō -ēre -cuī -citum(自)喜ばれる、快い、好ましい(+人の与格)
argūmentum -ī(中)象徴
pessimus -a -um(形)(最上級)最もひどい(悲惨な)
turba -ae(女)群衆、大衆
【参考文献】
幸福な生活について (大学書林語学文庫 3011)』山敷繁次郎・訳注(大学書林
羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata水谷智洋・編(研究社)

『カンタベリー物語』を原文で読む(第10回)

(テキスト12ページ、1行目~)

(The Clerk)

clerk(名)大学礼拝堂(教区教会)の書記(役人)

A Clerc ther was of Oxenford also,
That unto logyk hadde longe ygo.

Clerc→Clerk
ther→there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)(beを述語動詞として)
Oxenford→Oxford(名)=Oxford University(名)オックスフォード大学(12世紀に創立された英国最古の大学)
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの(先行詞がもの・人を表わす場合で、最上級の形容詞、all the、the only、the same、the veryなどの制限的語句を含む時、および、先行詞が疑問代名詞やall、much、little、everything、nothingなどの時に多く用いられる傾向があるが、絶対的なものではない)/(主語として)
unto(前)(古)~に、~のほうへ、~まで
logyk→logic(名)論理学
hadde→had
longe→long(副)長く、長い間、久しく
ygo→gone
go(自)(特定の仕事に)従事する(to)

As leene was his hors as is a rake,
And he was noght right fat, I undertake,
But looked holwe, and therto sobrely.

as(副)(通例as ~ as ~で、形容詞・副詞の前に置いて)(~と)同じ程度に、同様に、同じくらい(as ~ as ~で前のasが指示副詞、後のasは接続詞)
leene→lean(形)(人・動物が)(ぜい肉がなく引き締まって)やせた、細い(⇔flabby)
his(代)彼の
hors→horse
as(接)(as ~ as ~で同程度の比較を表わして)~と同じく、~と同様に、~のように、~ほど
rake(名)(干し草・落ち葉などをかき集めるための)くま手
noght→not
right(副)まったく、非常に、とても
undertake(他)(~と)保証する、断言する(+that)
but(接)(前の否定語・句・文と照応して)(~ではなく)て(not A but Bで「AではなくBである」の意を表わす表現)
look(自)(~に)見える、(~と)思われる(+補)
holwehollow(形)(体の一部が)へこんだ、落ち込んだ、こけた
thereto(副)なおそのうえに
sobrely→soberly(副)<sober(形)(人・性質・態度など)落ち着いた、謹直な、まじめな

Ful threedbaare was his overeste courtepy,
For he hadde geten hym yet no benefice,
Ne was so worldly for to have office.

Ful→Full
full(副)(形容詞・副詞を修飾して)まったく、非常に
threedbaare→threadbare(形)(布・糸類が)すれて糸の見える、すり切れた(=worn)
overeste→uppermost(形)最上の、最高の
courtepy→coat(名)上着、ジャケット
for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
geten→gothym→him
benefice(名)聖職禄(ろく)(給)
ne(古)(接)=nor(接)(否定の節・文の後に用いて)~もまた~ない(「not+動詞+主語」の倒置が起きる)
worldly(形)世俗的な、世渡り(世智)にたけた、世慣れた、世俗の欲にふける
for→as
so ~ as to do ~するほどに(~だ)
office(名)仕事、業務

For hym was levere have at his beddes heed
Twenty bookes, clad in blak or reed,
Of Aristotle and his philosophye
Than robes riche, or fithele, or gay sautrye.

levere→liefer
lief(副)(古)喜んで、快く(次の構文に用いて)I had liefer cut my throat than do it. それをするくらいならいっそのどを切って死んだほうがましだ。
beddes→bed's
heed→head(名)(単数形で/通例the ~)(ものの足部(foot)に対して)上部、上端 ・the head of a bed ベッドの頭(まくらの部分)
twenty(形)(基数の20)20の、20個の、20人の
bookes→books
clad(形)おおわれた(in)
in(前)(道具・材料・表現様式などを表わして)~で、~でもって、~で作った
blak→black(名)黒い布
reed→red(名)赤い服(地)
Aristotle(名)アリストテレス(384-322 B.C./古代ギリシアの哲学者)
philosophye→philosophy(名)哲学、哲学体系 ・the philosophy of Aristotle アリストテレスの哲学
robe(名)(しばしば複数形で)(弁護士・司法官・聖職者などの)礼服、官服、法服
riche→rich(形)(宝石・衣服など)高価な、華美な
fithele→fiddle(名)バイオリン
gay(形)(色彩・服装など)派手な、華やかな、きらびやかな
sautrye→psaltery(名)プサルテリウム(14-15世紀の一種の弦楽器/指またはばちでひく)

But al be that he was a philosophre,
Yet hadde he but litel gold in cofre;
But al that he myghte of his frendes hente,
On bookes and on lernynge he it spente,
And bisily gan for the soules preye
Of hem that yaf hym wherwith to scoleye.

al be that→albeit(接)たとえ~でも、~にもかかわらず
philosophre→philosopher(名)哲学者
yet(接)(although、thoughと相関的に用いて)それでも
but(副)ただ、ほんの、~だけ
litel→little(形)(不可算の名詞を修飾して)(aをつけないで否定的用法で)少ししかない、ほとんどない(⇔much)
gold(名)金貨
cofre→coffer(名)貴重品箱、金箱
al→all(代)(単数扱い)(関係詞節を従えて)(~の)すべてのこと
myghte→might(助動)(直説法過去)(主に間接話法の名詞節中で、時制の一致により)(許可を表わして)~してもよろしい
of(前)(起源・出所を表わして)~から、~の
frendes→friends
hente→get
on(前)(目的・用事を表わして)~のために
bookes→books
lernynge→learning(名)(またa ~)学問、学識、知識
spente→spend
bisily→busily(副)せっせと
gan(動)ginの過去形
gin(他)(古)=begin(他)(~し)始める、(~し)だす
soules→souls
soul(名)霊魂、魂
preye→pray
hem→them
yaf→gave
give(他)(人に)(ものを)与える、あげる(+目+目)
wherewith→wherewithal(名)(the ~ to do)(~する)(必要な)手段/(特に)金
scoleye→school(他)(人を)教育する、(人に)学校教育を受けさせる(=educate)

Of studye took he moost cure and moost heede.

of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について
studye→study
take(他)(決意・決心・見方・世話などを)する ・take care of ~を世話する
moostmost
cure→care(名)(細心の)注意、配慮、気配り
heede→head(名)頭の働き、頭脳、知力 ・use one's head 頭を使う、考える

Noght oo word spak he moore than was neede,
And that was spoke in forme and reverence,
And short and quyk and ful of heigh sentence;
Sownynge in moral vertu was his speche,
And gladly wolde he lerne and gladly teche.

oo→one
word(名)(しばしば複数形で)(口で言う)言葉
spak→spoke
speak(他)(人に)(言葉を)話す ・No one spoke a word. だれも何も言わなかった。
moore→more
more than ~(名詞・形容詞・副詞・動詞・節を修飾して)~より以上のもの、(~して)余りある
neede→needed
need(他)(~を)必要とする、(~する)必要がある
that(代)(指示代名詞)(前に言及しているか、場面上了解されている物事をさして)そのこと
spoke→spoken
in(前)(状態を表わして)~の状態に(で)
forme→form(名)(内容に対して)形式、外形(⇔content) ・in due form 正式に、型どおりに
reverence(名)(深い尊敬・愛情をもった)崇敬、尊敬 ・with reverence 尊敬の念をもって、うやうやしく
short(形)(時間・過程・行為など)短い
quyk→quick(形)活発な、元気のよい
ful→full(形)多くて、たくさんいて(of)
of(前)(目的格関係を表わして)(形容詞に伴って)~を
heigh→high(形)高尚な
sentence(名)文、文章
Sownynge→Sounding
sound(自)(廃)(~の)傾向(気味)がある、(~と)関係がある(in)
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で
moral(形)(善悪の基準になる)道徳(上)の、倫理的な
vertu→virtue(名)徳、美徳、徳行、善行(=goodness/⇔vice)
speche→speech(名)話すこと、発言
gladly(副)喜んで、快く
wolde→would(助動)(過去の習慣・動作などの反復についての回想を表わして)~したものだった、よく~した
lerne→learn(自)学ぶ、習う、覚える
teche→teach(自)(~で)教える
【参考文献】
原文対訳「カンタベリィ物語・総序歌」』苅部恒徳、笹川寿昭、小山良一、田中芳晴・編・訳・注(松柏社
カンタベリー・テールズ市河三喜、松浪有・編注(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

『ヴェニスの商人』を原書で読む(第6回)

(テキスト8ページ、4行目~)

ANTONIO
I hold the world but as the world, Gratiano,
A stage where every man must play a part,
And mine a sad one.

Antonio アントーニオー(Shakespeare, The Merchant of Veniceに登場する青年貿易商)
hold(他)(~と)思う、考える(+目+補)
world(名)(the ~/単数扱い)(渡る)世間、世の中
as(前)(動詞の目的補語を導いて)~と、~だと
but(副)ただ、ほんの、~だけ
Gratiano グラシアーノ(Shakespeare, The Merchant of Venice中の、AntonioとBassanioの友人の一人でおしゃべりな男/Portiaの侍女Nerissaと結婚する)
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
man(名)(男女を問わず一般に)人、人間
play(他)(劇で)((~の)役を)演じる、(~に)扮する
part(名)(映画などの)役(=role)
mine(形)悲しそうな、ふさぎ込んだ、憂鬱な
one(代)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ

GRATIANO Let me play the fool;
With mirth and laughter let old wrinkles come,
And let my liver rather heat with wine
Than my heart cool with mortifying groans.
Why should a man whose blood is warm within
Sit, like his grandsire cut in alabaster?
Sleep when he wakes? And creep into the jaundice
By being peevish? I tell thee what, Antonio,
I love thee, and ’tis my love that speaks:
There are a sort of men whose visages
Do cream and mantle like a standing pond,
And do a wilful stillness entertain
With purpose to be dressed in an opinion
Of wisdom, gravity, profound conceit,
As who should say, ‘I am Sir Oracle,
And when I ope my lips, let no dog bark.’
O my Antonio, I do know of these
That therefore only are reputed wise
For saying nothing, when, I am very sure
If they should speak, would almost damn those ears,
Which hearing them would call their brothers fools.
I’ll tell thee more of this another time.
But fish not with this melancholy bait
For this fool gudgeon, this opinion.
Come, good Lorenzo. Fare ye well awhile;
I’ll end my exhortation after dinner.

let(他)(容認・許可を表わして)(命令法で)(人・ものなどに)(~)させてください
fool(名)(昔、王侯・貴族にかかえられた)道化師(=jester)
with(前)(様態の副詞句を導いて)~を示して、~して
mirth(名)楽しい笑い、歓喜、陽気
laughter(名)笑い
old wrinkles=wrinkles of old age
wrinkle(名)(通例複数形で)しわ、小じわ
my(代)私の
liver(名)(古)(昔感情の源と考えられた)肝臓
heat(自)熱くなる、暖まる
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
wine(名)ワイン、ぶどう酒
than(接)(rather、soonerなどを伴って)~するより(むしろ)、するくらいなら(いっそ)
cool(自)冷える
mortifying=causing death
cause(他)(~を)引き起こす
groan(名)うめき(うなり)声(=moan)
should(助動)(why、howなどとともに用いて、当然の意を強調して)~しなければならない、~して悪いはずがない
whose(代)(関係代名詞)(制限的用法で)(その~が(を、に))~する(ところの)(人)(「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
warm(形)(体が)ほてる、熱くなる
within(副)内に(で)、中に(で)、内部は(で)
like(前)~のような、~に似た
his(代)彼の
grandsire(名)(古)祖父
cut(他)(石などに)(像を)刻む(in)
in(前)(道具・材料・表現様式などを表わして)~で、~でもって、~で作った ・a statue done in bronze 青銅で作った像
alabaster(名)雪花石膏
Sleep when he wakes ‘Why should a man’ に続く。
sleep(自)眠る
when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
wake(自)(通例wakingで)目覚めている、起きている、寝ずにいる
creep(自)(通例よくないことが)(気づかぬうちに)徐々に起こる(進行する)、忍び寄る、忍び込む
into(前)(変化・結果を表わして)~に(する、なる)(通例ある物が別の物に形や状態を変えることを表わす)
jaundice(名)黄疸(おうだん)
by(前)(手段・方法・原因・媒介を表わして)(doingを目的語にして)(~すること)によって
peevish(形)気難しい、すねる、怒りっぽい(=badtempered)
I tell thee what「あのね、話があるが」
love(他)(人などを)愛する、かわいがる、大事にする
thee(代)(古)なんじを(に)
'tis(古)it isの短縮形
it(代)(it is ~ thatの構文で文の主語・(動詞または前置詞の)目的語・副詞語句を強調して)(このitの次にくるbeの時制は通例clause内の動詞の時制と一致し、clause内の動詞の人称は直前の名詞・代名詞に一致する)
that(代)(関係代名詞)(It is ~ that ~の形で名詞(相当語句)を強調して)~のは
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
a sort of ~ 一種の~、~のようなもの
visage(名)顔、顔だち、容貌(ようぼう)
do(助動)(肯定)(法律文の常套的表現や詩・詩的散文での虚辞として)
cream and mantle=acquire a covering (mantle) of scum (cream)
acquire(他)(不正な手段を用いて)(ものを)得る
covering(名)おおうこと、被覆
mantle(自)(古)(液体が)上皮を生じる
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
scum(名)(またa ~)浮きかす、泡、(液体の)上皮
cream(自)(液が)上皮を生じる
standing(形)(水など)よどんだ ・standing water よどんだ水たまり
pond(名)池
do 文法的には前にwhoを補う
wilful(形)(英)=willful(形)故意の、意図的な(=delibarate)
stillness(名)沈黙
entertain=keep up(活動・状態などを)維持する、持続する
with(前)(原因を表わして)~のせいで、~のゆえに、~のために
purpose(名)目的、意図
dressed(形)(~の)服装をして(身じたくをして)(in)
in(前)(着用を表わして)~を着て、身につけて
opinion=reputation(名)評判、世評(of)
of(前)(同格関係を表わして)~という、~の、~である
wisdom(名)賢いこと、賢明、知恵
gravity(名)まじめさ、真剣さ、厳粛、沈着(=seriousness)
profound(形)(感情など)心からの、深い
conceit=thought
As who should say=as much as to say ~と言わぬばかりに
Sir(名)サー~(英国で準男爵baronet)またはナイト爵(knight)の人の氏名と併用する敬称)
oracle(名)神託を告げる人、託宣者、巫女(みこ)
ope=open
open(他)(ドア・目・容器・包み・手紙などを)あける、開く(⇔close、shut) ・open one's mouth 口を開く
lip(名)(複数形で)(発声器官としての)口 ・open one's lips 口を開く、しゃべる
bark(自)(犬・キツネなどが)(~に)ほえる
O(間)(常に大文字で、直後にコンマまたは!は用いない)(呼び掛けの名の前に用いて)ああ!、おお!
my(代)(呼び掛け語に添えて親しみを表わして)
know(自)(直接ではないが)(~のことを)間接的に知って(聞いて)いる(of)
of(前)(関係・関連を表わして)~の点において、~に関して、~について ・I know of him. 彼について(彼の名前、彼の評判)は(間接的に)知っている
there That=these people who
who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主語の場合)
therefore=therefor(副)(古)その(この)ために
only(副)ただ~だけ、~にすぎない
reputed(形)(~だと)思われて、うわさされて(+補)
for(前)(原因・理由)~の理由で、~のため(=because of)(+doing)
when=while(接)(主節の後方に置き、対照を表わして)ところが一方、しかるに
sure(形)確信して(⇔unsure)(+that)
if(接)(仮定・条件を表わして)もしも~ならば、~とすれば/(可能性の少ない未来の仮定を表わす場合)(すべての人称でif ~ shouldを用いる/「万一~なら」の訳語になる)
should(助動)(条件節に用いて実現の可能性の少ない事柄に対する仮定・譲歩を表わして)万一(~ならば、~しても)、もしかして~ということでもあれば(あっても)
would 前にtheyを補う
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(現在または未来の事柄について帰結節で無意志の仮定を表わして)~(する)だろう
almost(副)(動詞を修飾して)もう少しで、すんでのところで、~するばかりに
damn(他)(~を)(damnと言って)ののしる、のろう
those ears Which=ears of those who
those(代)(指示代名詞)(whoなどの関係代名詞を伴って)(~な)人々(⇔these)
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
their(代)彼ら(彼女ら)の
fool(名)ばか者(=idiot)
I'll I willの短縮形
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
tell(他)(人に)(~を)話す、告げる、語る、言う、述べる(+目+目)
more(代)それだけの事(もの)(of)
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
another(形)別の、ほかの
time(名)(頻度を表わし、通例副詞句をなして)回、度
fish(自)魚を捕らえる、釣りをする(for)
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)
melancholy(形)憂鬱な、陰気な、もの悲しい
bait(名)(釣り針・わなにつける)えさ
for(前)(獲得・追求・期待の対象を表わして)~を得るために(の)、~を(求めて)
fool(形)ばかな
gudgeon(名)タイリクスナモグリ、ガッジョン(ヨーロッパ産のコイ科の小魚/たやすく捕まえられ、食用や魚釣の餌(えさ)用)
this opinion ”gudgeon” と同格
good(形)忠実な
Lorenzo ロレンゾ(男子名)
fare(自)(well、badlyなどの様態の副詞を伴って)(人が)(よく、まずく)やっていく、暮らす(=get on) ・Fare you well!(古)さらば!
ye(代)(古)なんじらは(が)
awhile(副)しばらく、ちょっと
end(他)(~を)終える
exhortation=sermon
sermon(名)説教
【参考文献】
The Merchant of Venice (Penguin classics) (English Edition)
新訳 ヴェニスの商人 (角川文庫)河合祥一郎・訳
ヴェニスの商人 (対訳・注解研究社シェイクスピア選集 (3))』大場建治・編注訳(研究社)
ヴェニスの商人 (大修館シェイクスピア双書)』喜志哲雄・編注(大修館書店)
ヴェニスの商人 (研究社小英文叢書 (53))』岩崎民平・注釈(研究社)
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)
新英和大辞典 第六版 ― 並装』(研究社)

『黄色いリボン』

この週末は、ブルーレイで『黄色いリボン』を見た。

黄色いリボン Blu-ray

黄色いリボン Blu-ray

  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: Blu-ray
1949年のアメリカ映画。
監督は、『怒りの葡萄』『わが谷は緑なりき』『荒野の決闘』『幌馬車』『西部開拓史』の巨匠ジョン・フォード
製作は、『キングコング』『幌馬車』のメリアン・C・クーパー。
音楽は、『サムソンとデリラ』のヴィクター・ヤング
主演は、『赤い河』『ホンドー』『アラスカ魂』『史上最大の作戦』『西部開拓史』『大列車強盗(1973)』『マックQ』『オレゴン魂』の大スター、ジョン・ウェイン
共演は、『赤い河』『幌馬車』のジョアン・ドルー、『幌馬車』『ゲッタウェイ』『続・激突!/カージャック』のベン・ジョンソン、『幌馬車』のハリー・ケリー・ジュニア
カラー、スタンダード・サイズ。
威勢のいい音楽から始まる。
男達の合唱は例の有名な曲。
舞台は1867年のアメリカ。
「カスター将軍率いる第7騎兵隊の212人が戦死した。スーとシャイアン族は大暴れ。軍事電報は南西部まで訃報を伝えた。先住民たちの蜂起の恐怖が広範囲にわたって震撼した。第7騎兵隊の失敗が再度起これば、西部は百年前の無法地帯に戻る。カナダ国境からリオ・ブラボーまでの1万人の先住民キオワ、コマンチ、スーそしてアパッチ族らはクレージー・ホースの大酋長のもと団結し、騎兵隊と戦うべく結束を固めていった」というナレーション。
やや説明的過ぎる。
疾走する馬車。
ベン・ハー』みたいだ。
それを追って疾走する馬。
馬が馬車に追い付くと、馬車に乗っていた主計総監が殺されている。
馬車は暴走していたのだ。
主計総監の死がスタアク砦のブリトリス大尉(ジョン・ウェイン)に伝えられる。
ブリトリスは、あと6日で退役を迎えるのであった。
しかし、この頃のジョン・ウェインは、未だそんな年齢でもないだろう。
髪の毛は随分白くしているが。
主計総監の馬車から折れた矢が見付かる。
それはシャイアン族のものだった。
その頃、若くて少々頼りないペネル少尉(ハリー・ケリー・ジュニア)は、若くて気の強いオリヴィア(ジョアン・ドルー)を馬車に乗せてピクニックに出掛けようとしたところを、「女性は外出禁止です」と衛兵に止められる。
そこを通り掛かったブリトリスは、「オリヴィアを宿舎に送るから、一人でピクニックに行け」とペネルに告げる。
212人が戦死した。
ブリトリスは、亡くなった妻の墓前で、「退役したらカリフォルニアへ行きたい」と告げる。
そして、「カスター将軍の部隊が全滅したので、明日、シャイアン族を追い詰める」と。
最後の奉公だ。
そこへ、オリヴィアがやって来る。
ブリトリスに花を渡す。
シクラメンだ。
「いい娘だね、若い頃の君に似ている」と、奥さんになぞらえる。
コロッといかれてしまったブリトリスだが、この娘は、美人だが、そんなにいい娘には見えない。
翌朝、部隊に何故か幌馬車がある。
「偵察に(女の道具をいっぱい積んだ)幌馬車は要らん!」とブリトリスが告げると、「命令です。」
何と、隊長から、「家内(ミルドレッド・ナットウィック)と姪(先のオリヴィア)を駅馬車があるところまで送って欲しい」というのであった。
ブリトリスは納得していないが、上官の命令とあらば仕方がない。
「この部隊に女性が加わる。」
オリヴィアは髪に黄色いリボンを付けている(タイトルの由来)。
「黄色いリボンというのは恋人の意味だが、誰の恋人かな?」とブリトリスが聞くと、「もちろん大尉よ」と答えるオリヴィア。
あちこちに色目を使う女にしか見えない。
美人だが。
本作は、1949年のカラー作品だ。
この時代にカラーというのはスゴイが。
テクニカラーは発色が良くて、本作の風景は、まるで絵画のようである。
かくして、騎兵隊は出発した。
先導はタイリー軍曹(ベン・ジョンソン)であった。
その頃、謎の軍事商人が南へ向かっていた。
本作も、ジョン・フォードの西部劇らしく、例によって、ゆったりと進む。
途中、騎兵隊は、馬を休めるために歩く。
幌馬車もガタガタである。
遠方に、アラパホ族の集団が移動しているのが見える。
すごい人数である。
アラパホ族も、騎兵隊と同じ方向に向かっている。
「女を危険にさらす訳には行かない。引き返そう」とブリトリス。
目的地へは反対側から行くことになる。
半日のロスで、駅馬車には間に合わない。
本作では、部隊にワンコが付いて回る。
馬が疾走する時も、ものすごい速さで付いて行く。
途中、野生のバッファローの大群に出会う。
ものすごい数だ。
ダンス・ウィズ・ウルブズ』でもバッファローの大群が出て来たが、この辺の影響を受けているのだろう。
白人を追い出そうと、先住民たちがシャイアン族を引き込む機会だろう。
例の軍事商人が酋長に銃を売る。
余談だが、本作は、ブルーレイにしては、フィルムの傷がかなり目立つ。
デジタル・リマスタリングなどは行われていないのだろう。
まあ、廉価版だからな。
危険を察知したブリトリスは、「偵察隊と合流しろ」と命じる。
偵察隊がこちらに向かって来た。
後ろから先住民達の馬が追いかけて来る。
ブリトリスらは、銃撃で追い返した。
偵察隊は、アラパホに銃撃されたのであった。
「合流点へ行ったが、中隊はいなかった」と。
そりゃそうだよな、途中で方向転換したのだから。
偵察隊は、夜中に攻撃されたのであった。
再び、偵察に向かう。
シャイアンが追い掛けて来る。
崖から崖へ馬で飛ぶ。
すごいシーンだ。
シャイアンの馬達は怖がって飛べない。
その後、暗雲が立ち込め、稲妻が光る中、荒野を進む騎兵隊。
大変なロケだ。
息子の心臓をかすめた矢を抜く手術をするので、馬の速度を落としてくれと頼む医者。
停止してやらんと死ぬぞ。
しかし、手術は成功。
走っている馬車の中で手術って。
前方に、駅馬車の宿駅が見える。
シャイアンとアラパホが組んで、襲われた跡だ。
「退役だというのに」ブリトリスは嘆く。
目の前で老兵が死ぬ。
ブリトリスの口癖は、「謝罪はよせ。弱さの象徴だ。」
任務は失敗であった。
駅馬車はもうない。
さあ、これからどうなる?
過酷な自然の中のロケは大変だっただろう。
そして、働き者のワンコが印象に残る。
クライマックスの馬の大群の疾走がものすごい。
さすが、クロサワが敬愛するジョン・フォードだけある。
ただ、ラストの「彼らが戦った土地がアメリカ合衆国になったのである」というのは、非常に白人目線で、現在では絶対に受け入れられないだろう。
あと、騎兵隊が整列している中で、『フルメタル・ジャケット』とソックリのシーンがある。
そう言えば、『フルメタル・ジャケット』の中で、「ジョン・ウェインがどうのこうの」というセリフがあったな。
キューブリックのオマージュだろう。
アカデミー賞撮影賞(カラー部門)受賞。
1951年度洋画興行収入8位。

She Wore a Yellow Ribbon (1949) - Trailer

イギリス文学史I(第9回)『ユートピア』(その2)

英文読解
それでは、『ユートピア』の第1巻の冒頭部分を読んでみましょう。
下に「英文」「日本語訳」を記しました。
「英文」には、語注も付けてあります。

THOMAS MORE

More, Sir Thomas(名)モア(1478-1535/英国の政治家・作家/カトリック教会における聖人)

Utopia

Utopia(名)ユートピア(Sir Thomas More作Utopia(1516)中に描かれた理想郷)
(1)

(英文)
(テキスト23ページ、1行目)
BOOK ONE

book(名)巻、編 ・Book I 第1巻(book oneと読む)
one(形)(基数の1)(名詞の後に置いて)(一連のものの中の)1番目の ・Lesson One(=The First Lesson)第1課

(日本語訳)
第一巻

(2)

The most invincible Henry, King of England and eighth of that name, a prince richly endowed with all the qualities of an outstanding ruler, recently had a dispute with Charles, the most serene Prince of Castile, over matters that were far from trifling, and sent me as ambassador to Flanders to discuss and resolve them. I was to accompany and assist that exceptional man Cuthbert Tunstall, whom the King, to general acclaim, has recently appointed Master of the Rolls.

most(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の最上級を作って)最も、いちばん
invincible(形)征服できない、無敵の(=unbeatable)
Henry(名)ヘンリー(イングランド王の名) ・Henry VIII(在位/1509-47)(国教会を設立/Elizabeth Iの父)
England(名)イングランド(Great Britain島のScotlandとWalesを除いた部分)
eighth(代)(序数の第8番)(通例the ~)第8番目の人(もの)
that(形)(指示形容詞)(対話者同士がすでに知っているもの・人をさして)あの(⇔this)
prince(名)(通例単数形で)(その道の)第一人者、大家
richly(副)豊富に、豊かに、十分に
endow(他)(人に)(才能・特権などを)賦与する、授ける(通例受身)(with)
with(前)(委託を表わして)(もの)を(ゆだねて)
all(形)(複数名詞の前に置いて)あらゆる、すべての、みな
quality(名)(通例複数形で)(もの・人などの)特質、特性、特色(of) ・the qualities of a king 王者の(備えるべき)特性
outstanding(形)傑出した、実にすぐれた、抜群の
ruler(名)支配者、統治者、主権者
recently(副)最近、近ごろ、このごろ(現在完了か過去形の動詞とともに用い、通例現在時制の動詞とは用いない)
have(他)(通例動作・行為などを表わす不定冠詞付きの名詞を目的語として)(~)する、(~を)行なう
dispute(名)紛争、争議、抗争(with)(over)
with(前)(接触・交際・結合などを表わして)~と ・discuss a problem with a person 人と問題を話し合う ・join A with B AをBに接合する
Charles(フランス王)シャルル
serene(形)(ヨーロッパ大陸で王侯(王妃)に対する敬称に用いて)高貴な
prince(名)(しばしばPrince)(大国に守られた公国・小国の)王、君主、公 ・the Prince of Monaco モナコ
Castile(名)カスティリヤ(スペイン中部の古王国)
over(前)~に関して ・talk over the matter with ~とその事について話し合う
that(代)(関係代名詞)(人・ものを表わす先行詞を受けて通例制限用法で)(~する(である))ところの/(主語として)/(他動詞・前置詞の目的語として)(前置詞は関係詞節内の動詞の後に置かれる)
far from ~ 少しも~でない
trifling(形)くだらない、取るに足らない
send(他)(通例副詞句を伴って)(人・軍隊などを)行かせる、やる、派遣する
as(前)~として(続く名詞が官職・役目・資格・性質など抽象的概念を意味している時には無冠詞)
ambassador(名)(公式または非公式の)使節
to(前)(方向を表わして)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に ・go to ~に行く
Flanders(名)フランドル、フランダース(ベルギー北西部の5州とフランス北部の小地域を含み北海に臨む地方)
resolve(他)(問題・困難などを)解決する(=solve)
be(助動)(be+to doで)(義務・命令を表わして)~する義務がある、~しなければならない
accompany(他)(人が)(別の人に)同行する、ついていく
assist(他)(人を)手伝う、援助(助力)する
that(形)(指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔this)
exceptional(形)並はずれた、非凡な、すぐれた(=extraordinary)
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)
Tunstall(名)タンスタル Cuthbert Tunstall(1474-1559)(イングランドの聖職者/教会や官界の顕職につき、国王の至上権に黙従したが、カトリックの教義を奉じたため、Edward6世下で官位を奪われ、Mary1世の即位で回復し、Elizabeth1世下で再び失った)
whom(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)を(に)(whomの省略は不可)
to(前)(結果・効果を表わす句を導いて)
general(形)世間一般の、社会の大部分に共通する、普通の
acclaim(名)絶賛
appoint(他)(~を)指名する、任命する(=assign)(+目+補)/(+目+to do)
master(名)(各種団体の)会長、団長、院長
roll(名)(the Rolls)保管書類収蔵所(もとはthe Master of the Rollsの、今はPublic Record Officeの所管) ・the Master of the Rolls 記録長官(控訴院の専任の裁判官の中で最上位の裁判官)

軽少ならざるある問題について、王者の万徳に秀でた不敗のイギリス王ヘンリー八世は最近明澄なるカスティリア公シャルルと争いたまい、その討議、解決のために、私を交渉委員として、抜群の人物カスバート・タンスタルの同伴、同僚として、フランダースに派遣された。タンスタルはみなの大好評のうちに王の大法官官房書記長に任命されたばかりの人だった。

(3)

I'll say nothing in praise of him, not because I'm afraid that the testimony of a friend will carry little weight, but because his integrity and learning are too widely celebrated for it to be necessary, unless, as the proverb has it, I wished to show the sun with a lantern.

I'll I willの短縮形
will(助動)(意志未来を表わして)(1人称の主語に伴い、発話時の話者の意志を表わし、約束・諾否・主張・選択などを示して)~するつもりである、~しようと思う
in(前)(行為・活動・従事を表わして)~して、~に従事して
praise(名)称賛、ほめる(られる)こと ・in praise of ~をほめて、たたえて
of(前)(目的格関係を表わして)(しばしば動作名詞または動名詞に伴って)~を、~の
not(副)(述語動詞・文以外の語句を否定して)~でなく
because(接)(副詞節を導いて)(なぜなら)~だから(である)、~なので
I'm I amの短縮形
afraid(形)(~を)心配して、気づかって(よくない事の起こる可能性のある時に用いる)(+that)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(形容詞・自動詞などに続く節を導いて)(文法的に副詞節とも考えられるが、意味上他動詞相当句と考えて名詞節に入れる)/(主語節を導いて)/(目的語節を導いて)
testimony(名)(法廷で行なう)証言、口供書(of)
of(前)(主格関係を表わして)(動作の行為者、作品の作者を表わして)~が、~の
will(助動)(話し手の推測を表わして)~だろう
carry weight(意見などが)影響力がある、重きをなす
little(形)(不可算の名詞を修飾して)(aをつけないで否定的用法で)少ししかない、ほとんどない(⇔much)
but(接)(等位接続詞)(前の否定語・句・文と照応して)(~ではなく)て(not A but Bで「AではなくBである」の意を表わす表現)
his(代)彼の
integrity(名)高潔、誠実、清廉
learning(名)(またa ~)学問、学識、知識
too(副)(形容詞・副詞の前に置いて)(~するには)~すぎる、非常に~で(~する)ことができない(for)(to do)
widely(副)広く、広範囲に
celebrated(形)名高い、有名な
for(前)(不定詞の主語関係を示して)~が(~する)
unless(接)(否定の条件を表わして)~でない限り、もし~でなければ(通常if ~ notと言い換えられるが、現実とかけ離れた仮想の出来事・状態とともに用いることはまれ)
as(接)(様態・状態を表わして)~のように
proverb(名)諺(ことわざ)、金言 ・as the proverb says 諺に言うとおり
have it(~と)表現する、言う、確言する、主張する ・As Kant has it ~ カントの言うように~
wish(他)(~)したい(と思う)(+to do)
show(他)(~を)見えるようにする
with(前)(道具・手段を表わして)~を用いて、~で
lantern(名)手さげランプ、角灯、カンテラ

この人の賞讃に私はよけいなことばを費やすまい。それは、友情からの証言というものは人に信用されまいという恐れからではなく、彼の徳と学識は私の筆舌に尽くせぬほど偉大であり、また私が賞めたてる必要もないほどよく知られているからである。「太陽を蝋燭の光で照らし出そうとする」、という俚諺どおりのことをやっていると思われたいなら別であるが。

(4)

Those appointed by the Prince to deal with us, all of them men of high standing, met us at Bruges as arranged.

those(代)(指示代名詞)(修飾語句を伴って)(~の)もの、人々(⇔these)
appoint(他)(~を)指名する、任命する(=assign)(+目+to do)
deal(自)(人が)(問題・人を)処理する、扱う(with)
all(代)(複数扱い)(同格にも用いて)だれも、みな(通例代名詞の場合に用いる/代名詞の前に来る時はall of ~の形式をとる)
man(名)(修飾語句を伴って)(特定の仕事・性格などの)男性(of)
of(前)(of+名詞で形容詞句をなして)~の
high(形)(身分・地位など)高い、高貴な
meet(他)(折衝などのため)(人と)面会(会見)する
Bruges(名)ブリュージュ(ベルギー北西部西フランドル(West Flanders)州の州都)
arrange(他)(事を)前もって整える、用意しておく、手配する、準備する

相手方の主君の命で交渉役をおおせつけられていた委員たちは〔予定されていたとおり〕ブルージュで私たちと会見した。みな優れた人たちだった。

(5)

Their principal and leader was the Burgomaster of Bruges, a very striking figure. But their spokesman and guiding spirit as Georges de Themsecke, the Provost of Cassel, whose eloquence derived as much from natural flair as from training; he was deeply learned in the law and, thanks to his wit as well as long experience, a consummate negotiator.

their(代)彼ら(彼女ら)の
principal(名)長官、社長
leader(名)首領、主将
burgomaster(名)(オランダ・オーストリア・ドイツ・ベルギーなどの)市長
striking(形)目立つ、著しい
figure(名)(通例修飾語を伴って)(重要な)人物
spokesman(名)スポークスマン、代弁者、代表者
guiding(形)目印(指針)となる
spirit(名)(修飾語を伴って)(~の性格(気質)を持った)人、人物 ・a leading spirit 指導する(先頭に立つ)人
Georges ジョージ、ジョルジュ(男子名)
de(前)~の(of)、~から(from)、~に属する(母音の前ではd'/フランス(系)人などの姓で用いられ、元来は出身地を示す)
provost(名)(通例Provost)(大聖堂の)主席司祭
Cassel カッセル(ドイツ中部Hesse州の市)
whose(代)(関係代名詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてその人(たち)の
eloquence(名)雄弁、能弁
derive(自)(~に)起源を持つ、由来(派生)する、(~から)出ている(from)
as much ~ as ~ ~と同じ程度に~
from(前)(出所・起源・由来を表わして)~から(来た、取ったなど)
natural(形)生まれつきの、生得の
flair(名)(またa ~)才能
deeply(副)深く
learned(形)学問(学識)のある、博学な、博識な ・She's learned in the law. 彼女は法律に通じている。
in(前)(性質・能力・芸などの分野を限定して)~において、~が
thanks to ~(前置詞的に)~のおかげで、~のせいで、のため(=owing to)
wit(名)(また複数形で)理知、知力
as well as ~ ~はもちろん、~も~も
long(形)(時間・過程・行為など)長い、長期にわたる(⇔short)
consummate(形)熟練した
negotiator(名)交渉者、折衝者

ブルージュの市長で豪邁なる人物がむこうの委員団の団長、頭領だったが、交渉の指導役、スポークスマンとなったのはカッセルの司教座大聖堂司祭団長のゲオルグ・デ・テムゼッケである。この人は修練によってのみならずたしかに生まれつき弁論に秀で、さらに法律にくわしく、また日ごろの実務経験のみならず天与の才能によって外交交渉での第一級の達人であった。

(6)

When, after several meetings, there were still various points on which we failed to agree, they took leave of us for some days and went to Brussels to consult with the Prince.

when(接)~する時に、~時(時を表わす副詞節をつくる)
there(副)(thereは形式上主語のように扱われるが、動詞の後に通例不特定のものや人を表わす主語が続く/「そこに」の意味はなく、日本語ではthere isで「~がある」の意になる)/(beを述語動詞として)
still(副)それでも(やはり)、なお(=nonetheless)
various(形)いくつかの、種々さまざまの
point(名)(通例単数形で)問題(点)、論点
on(前)(関係を表わして)~について、~に関する
which(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(もの、事)(通例「もの」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(目的格の場合)
fail(自)(人・ものが)失敗する、しくじる(⇔succeed)(+to do)
take leave of ~ ~にいとまごいする、あいさつをして(~と)別れる
for(前)(時間・距離を表わして)~の間(ずっと) ・for two months 2か月間
to(前)(到達の意を含めて)~まで、~へ、~に ・go to ~に郁
Brussels(名)ブリュッセル(ベルギーの首都/ECの本部がある)
consult(自)(人と)(~のことで)協議(相談)する、打ち合わせる、話し合う(with)

数回会合したにもかかわらず、いくつかの点について双方十分に同意できず、彼らは数日の猶予をということでわれわれに別れを告げ、カスティリア公の裁可を仰ぐためにブリュッセルにおもむいた。

(7)

In the meantime, as my own affairs dictated, I made my way to Antwerp.

in the meantime(2つのことが起こる)その間に
as(接)(原因・理由を表わして)~だから、~ゆえに
my(代)私の
affair(名)(するべき)仕事、用事
dictate(自)(通例否定文で)(人に)指図する
make one's way 進む、行く
Antwerp(名)アントワープアントウェルペン(ベルギー北部の貿易・工業都市で同名州の州都)

この間私は〔用事があって〕アントワープに出かけた。

(8)

Among those who visited me during my stay there, none was more welcome than Peter Giles, a native of that city, where he was much respected and already occupied high office, being fitted for the very highest; indeed, it's hard to tell whether this young man stands out more for his learning or for his moral character.

those(代)(whoなどの関係代名詞を伴って)(~な)人々
who(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(した)(人)(通例「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)/(主格の場合)
during(前)(特定期間の)~の間のいつか、の間に(の)
stay(名)(通例単数形で)滞在、逗留(とうりゅう)
none(代)だれも~ない
more(副)(主に2音節以上の形容詞・副詞の比較級をつくって)(~より)もっと(than)
welcome(形)(客など)歓迎される
Peter(名)ピーター(男性名/愛称Pete)
Giles ジャイルズ(男子名)
native(名)(~の)生まれの人(of)
where(副)(関係副詞)(非制限的用法で/通例前にコンマが置かれる)そしてそこに(で)
much(副)(過去分詞を修飾して)大変に、非常に、大いに
respected(形)尊敬されている、りっぱな
occupy(他)(地位・役を)占める、(職に)つく(=hold) ・occupy a high position 高い地位についている
office(名)職務、任務、役目
fitted(形)(~に)適して、ふさわしく(for)
for(前)(用途・指定・適否を表わして)~に適した
very(形)(the、this、thatまたは所有格人称代名詞に伴って強意を表わして)まさしくその、ちょうどその、~にほかならない
it's it isの短縮形
it(代)(形式主語としてあとにくる事実上の主語の不定詞句・動名詞句・that節などを代表して)
hard(形)難しい、骨の折れる(⇔easy)(+to do)
tell(他)(can、couldなどを伴って)(~を)知る、わかる(+wh.)
this(形)(指示形容詞)この/(対話者同士がすでに知っているもの(人)をさして)(⇔that)
stand out(他より)(人・ものが)際立つ、すぐれている
more(副)(muchの比較級)もっと、より多く(⇔less)
for(前)(感情・趣味・適性などの対象を表わして)~に対して(する)、~を理解する
moral(形)(善悪の基準になる)道徳(上)の、倫理的な ・moral character 徳性、品性
character(名)人格、品性

同地に滞在中やってきた訪問客のなかで、私がいつも他のだれよりもありがたく思って迎えたのはアントワープ生まれのピーター・ヒレスであった。彼はあそこの市民のあいだで信用厚く、名望ある地位にあり、かつ最高の名誉を受けるに値する人物である。この若い人物は学問、品行のいずれにおいてより秀でているか、そう聞かれると私は返答に困るほどである。

(9)

For he's truly upright, exceptionally well-read and considerate to all, while to his friends he is so open-hearted, so warm, trustworthy and sincere, that you would be hard put to it to find anyone anywhere whom you might rate his equal in the attributes of friendship.

for(接)(通例コンマ、セミコロンを前に置いて、前文の付加的説明・理由として)という訳は~だから(=as、since)
he's he isの短縮形
truly(副)(特に形容詞を修飾して強意的に)本当に、実に、まったく
upright(形)正しい、正直な、高潔な
exceptionally(副)並はずれて、非常に
well-read(形)博識の
considerate(形)思いやりのある(⇔inconsiderate)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)~に対して、~に
all(代)(複数扱い)すべての人々
while(接)(主節の後方に置き、対照を表わして)同時に(=whereas)
so(副)(程度・結果を表わして)(so ~ that ~で)(順送りに訳して)非常に~なので~
open-hearted(形)腹蔵のない、率直な
warm(形)温情のある、思いやりのある
trustworthy(形)信頼(信用)できる、当てになる(=reliable)
sincere(形)(人が)うそ偽りのない、言行一致の、正直な、誠実な(⇔insincere)
that(接)(副詞節を導いて)(so ~ thatの形で程度・結果を表わして)(非常に)~なので、~(する)ほど
would(助動)(仮定法(叙想法)で用いて)(条件節の内容を言外に含め陳述を婉曲(えんきょく)にして)~であろう、~でしょう
be hard put to it ひどく困っている(+to do)
find(他)(探して)(人・ものを)見つけ出す
anyone(代)=anybody(代)(疑問文・条件節で用いて)だれか
anywhere(副)(疑問文・条件節に用いて)どこかに(へ)
whom(代)(関係代名詞)(制限的用法で)~する(ところの)(人)(「人」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
might(助動)(条件節の内容を言外に含めた主節だけの文で)(現在の推量を表わして)~するかもしれない
rate(自)(~と)見積もられる、評価される(+補)
equal(名)(地位・能力・年齢など)同等(対等)の人(in)
in(前)(範囲を表わして)~において、~内で
attribute(名)属性、特性、特質

というのは、彼は道徳的に最高の人物であると同時に博学多識、そのうえすべての人にたいして率直、友人にたいしては非常に開放的で、愛情、忠実、誠意に満ちた心の持主なので友情のすべての点で彼と比較できる人をさがし出すことは困難なほどだからである。

(10)

He has a rare modesty; no one is less given to deceit or better combines prudence with simplicity. On top of all this, his talk is so entertaining and witty without a hint of malice that, although I had been away for more than four months, my longing to see my own country again, and with it my home, my wife and my children, was eased by his engaging company and delightful conversation.

have(他)(部分・属性として)(特徴・性質・能力などを)もっている
rare(形)まれな、珍しい、めったにない(⇔common)
modesty(名)謙遜(けんそん)、謙虚、慎み深さ
no one(代)だれも~ない
less(副)(動詞を修飾して)より少なく
given(形)(~に)ふけって(to)
deceit(名)虚偽(=deception)
better(副)(wellの比較級)いっそう大いに、もっと
combine(他)(別々の性質などを同時に)兼ねる、兼ね備える(with)
prudence(名)思慮分別、賢明さ
simplicity(名)純真、無邪気、気取りのないこと
on top of ~ ~に加えて、~の上に
this(代)(指示代名詞)(すぐ前に言われたことをさして)こう、こういう、このこと
talk(名)話、談話、会話
entertaining(形)愉快な、おもしろい
witty(形)機知に富んだ
hint(名)(a ~)わずか(=trace) ・a hint of ~ わずかの~
of(前)(分量・内容を表わして/数量・単位を表わす名詞を前に置いて)~の
malice(名)(相手を傷つけようとする意図的な)悪意、敵意、恨み
although(接)~であるが、~だけれども、とはいえ
away(副)(位置を表わして)別の所にいて、不在で
more than ~ ~より多い、~を越える
four(形)(基数の4)4の、4個の、4人の
longing(名)(~したいという)切望、熱望 ・one's longing to see one's native country 故国を見たいという願い
country(名)(通例one's ~)本国、祖国、故国
with(前)(同時・同程度・同方向などを表わして)~とともに、~と同時
home(名)(生活の場としての)家、わが家、自宅(通例家族の生活・だんらんのイメージを持つ)
ease(他)(苦痛・心痛・緊張などを)やわらげる、軽くする、緩和する
engaging(形)人を引きつける、魅力のある
company(名)つき合い
delightful(形)楽しい、愉快な
conversation(名)会話、談話、対話、座談、会談

彼は珍しいほど慎ましやかで、彼ほどみせかけと縁の遠いものはいないし、これ以上の賢明さを秘めた単純さの持主はおらず、また彼の話は非常に軽妙酒落であり、かつ、邪気のない機知に富んでいる。だから彼との楽しいつきあいと魅力ある会話のおかげで、故郷、わが家、妻子らへの私のホームシックはずいぶんやわらいだ。じつは私は〔すでに四ヵ月以上も家を留守にして〕彼らとの再会の念にかられて居ても立ってもいられないほどだったのである。

(11)

One day I attended Mass in Notre Dame, the most handsome and frequented church in Antwerp, and after the service had ended I was preparing to return to my lodgings when I saw Peter talking with a stranger, a man verging on old age, sunburnt, with a shaggy beard and a cloak slung carelessly over his shoulder. It struck me from his face and attire that he was a ship's captain.

one(形)(基数の1)(時を表わす名詞の前に用いて)ある ・one day(過去か未来の)ある日
day(名)(副詞的に)~日 ・one day(過去の)ある日
attend(他)(儀式に)参列する
Mass(名)ミサ ・attend Mass ミサに参列する
Notre Dame(名)聖母マリア
handsome(形)(建物など)見事な、堂々とした
frequent(他)(場所に)しばしば行く、よく行く(集まる)
church(名)(キリスト教の)教会(堂)、聖堂
in(前)(全体との関係を表わして)~の中で、~のうちで
after(接)(~した)後に(で)、~してから
service(名)礼拝(の式)、お勤め
end(自)終わる、済む
prepare(他)(~を)準備する、用意する(+to do)
lodging(名)宿所、宿
when(接)(主節の後にwhenの導く従属節がくる時文脈上で)(~すると)その時(主節が進行形または過去完了形で表わされる場合に用いられる)
see(他)(~を)見る、(~が)見える(+目+doing)
talk(自)(人と)話をする、話し(語り)合う(with)
stranger(名)(見)知らぬ人、他人
verge(自)(~の状態に)近づく、今にも(~に)なろうとする(=border)(on)
on(前)(近接を表わして)~に接して、~に面して
sunburnt(形)小麦色に日焼けした
with(前)(所持・所有を表わして)~を持って(た)、~のある
shaggy(形)(髪・毛など)もじゃもじゃの、くしゃくしゃの
beard(名)あごひげ
cloak(名)(ゆったりとした)そでなしの外套(がいとう)、マント
slung(動)slingの過去形・過去分詞
sling(他)(通例副詞句を伴って)つり下げる、ぶら下げる、つり包帯でつる(しばしば受身) ・sling one's coat over one's shoulder 上着を肩にひっかける
carelessly(副)ぞんざいに
over(前)(位置を表わして)(接触した位置を表わして)~の上をおおって ・over one's shoulders 肩にかけて
strike(他)(考えが)(人の)心に浮かぶ ・It strikes me that ~. ~のような気がする。
from(前)(根拠・動機を表わして)~から(判断して)
face(名)顔色、顔つき
attire(名)装い、服装、衣装
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(主語節を導いて)
captain(名)船長、艦長、艇長

ある日、わたしはたいそう美しい建築で、おおぜいの人でいっぱいな聖母の教会でのミサに参列した。礼拝が終わって宿に帰りかけていたとき、私はピーターがひとりの見知らぬ男と話しているのをふと見かけた。この男は老年に近く、日焼け顔で長いあごひげをたくわえ、外套をさりげなく肩にひっかけて着ており、顔つきや服装からは船乗りと見えた。

(12)

When Peter caught sight of me he came over and greeted me. I was about to respond when he drew me aside and, pointing to the man with whom I had seen him talking, muttered, ‘Do you see this character? I was just about to bring him over to you.’

catch(他)(感覚を)感じとる、とらえる ・catch sight of ~を見つける
sight(名)(またa ~)見ること、見えること ・catch sight of ~を見つける
come over やってくる、渡来する
greet(他)(口頭・動作・書面などで)(人に)あいさつする、(人を)迎える
about(形)今にも(~)しかけていて(+to do)
respond(自)返答する、応答する
draw(他)(副詞句を伴って)(ものを)(ある方向に)引き寄せる ・He drew me aside.(こっそり話をするために)彼は私をかたわらに引き寄せた。
point(自)(~を)指さす、さす(to)
mutter(他)低い声でぶつぶつ言う(+引用)
do(助動)(be以外の動詞の疑問文に用いて)
character(名)(修飾語を伴って)(~な)人、人物
bring over(人・ものを)(遠くから)連れて(持って)くる

ピーターは私を見つけるやいなや、こちらにやって来て挨拶し、それに答えようとした私をちょっとかたわらにひきよせて〔私がさきほど見た彼の話し相手のほうを指さしながら〕言った。「あの人のことですがね。私は今ちょうどあの人をあなたにお引きあわせしようと思っていたのです」。

(13)

‘He would have been most welcome for your sake,’ said I.

most(副)(通例theを用いないで)はなはだ、非常に
your(代)あなた(たち)の、君(ら)の
sake(名)(for the sake of ~、for ~'s sakeで)~のための(に)(for the sake of ~、for ~'s sakeは目的・理由を表わす)
say(他)(人に)(~と)言う、話す、述べる、(言葉を)言う(+引用)

私は言った「私としてはほかならぬあなたがお引きあわせくださるのでしたら、もちろん大歓迎いたしたはずですよ」。

(14)

‘But for his own too, if only you knew the man,’ he answered, ‘for there's no man living today who can give you such an account of unknown peoples and lands, a topic that I know you are always keen to hear about.’

own(代)(one's ~/独立用法で)自分独特のもの(立場)
if only ~さえしていれば
answer(他)(人に)(~と)答える、答えて言う(+引用)
there's there isの短縮形
living(形)生きている(⇔dead)
today(副)現今(では)、今日(は)、このごろは(=nowadays)
give(他)(人に)(言葉・返事・命令・あいさつなどを)述べる、言う(+目+目)
account(名)(順を追ってする詳しい)話 ・give an account of ~の話をする、~の顛末(てんまつ)を話す
unknown(形)未知の、不明の、未詳の ・an unknown place 未知の場所
people(名)民族、種族、国民(文化的・社会的な共通性をもつ人々)
land(名)国、国土
topic(名)話題、話の種、テーマ、トピック
know(他)(~を)知る、知っている、(~が)わか(ってい)る(+that)
keen(形)熱心に(~)したがって(+to do)
hear(自)(~について)(消息を)聞く、聞いて知る(about)

「いや私がご紹介するのではなくて」と彼は言った。「もしあなたがあの人のことをご存じでしたら、あの人と知り合いになれるというだけで大歓迎なさったはずですよ。同時代人のなかで、未知の人々、未知の土地について彼ほどにたくさん話のできる人はいません。あなたはたしかそういう話を非常に聞きたがっていらっしゃいましたね」。

(15)

‘So, my guess wasn't such a bad one,’ I replied, ‘for at first glance I suspected that he was a ship's captain.’

so(副)(間投詞的に文頭に用いて)(前言を受けて)そうすると、つまり
guess(名)推測、推量、憶測
wasn't was notの短縮形
such(形)(程度を表わして)(形容詞+名詞の前で/副詞的に)あれほど(これほど)の、あんな(そんな)に、このように
bad(形)間違った
one(代)(基数の1)(既出の可算名詞の反復を避けて)(その)一つ、それ
reply(他)(~と)答える(+引用)
at first glance 一見したところでは
suspect(他)(~ではないかと)思う(思う内容は通例よくないこと、望ましくないことを表わす)(+that)
that(接)(名詞節を導いて)(~)ということ/(目的語節を導いて)

私は言った。「それなら私の見当はおおはずれではなかったわけですね。なぜかというとあの人を一目見るなり私はあれは船乗りに違いないと感じましたからね」

(16)

‘Then you are right off target,’ he said, ‘for he hasn't sailed like Palinurus, but rather like Ulysses, or, better still, Plato. For this man, Raphael as he's called, his family name being Hythloday, is far from incompetent in Latin and is especially well versed in Greek. He studied the latter more than Latin because he's devoted himself wholly to philosophy, and he realized that in that field there's nothing of any substance in Latin apart from certain pieces by Seneca and Cicero. Driven by a desire to see the world, he left to his brothers the patrimony that was his due at home (he happens to be Portuguese), attached himself to Amerigo Vespucci, and was his constant companion on the latter three of those four voyages which you now read about everywhere. Except that on the last one he didn't return with him: instead he nagged and pestered Vespucci, and so far prevailed that the latter let him be one of twenty-four men who were left behind in a fort at the furthest point of that final trip. So he was left there in order to gratify his own inclination, being more taken up with his travels than his last resting place. He had the habit of remarking, “He who has no grave is covered by the sky”, and “Whatever the place, it's the same distance from heaven.” Such an attribute might well have proved costly if God had not been gracious to him. Once Vespucci had departed, he travelled through many territories along with five companions from the fort, and at length, having arrived by a happy turn of fortune in Ceylon, he got from there to Calicut where he conveniently met up with some Portuguese ships and finally, against all expectation, regained his homeland.’

then(副)(通例文頭または文尾に用いて)それなら、(それ)では
right(副)まったく、すっかり
off(前)(離れた位置・状態を表わして)(場所)から(離れて、隔たって)、~を離れて、それて
target(名)(射撃などの)的(まと)、標的
hasn't has notの短縮形
sail(自)(通例副詞句を伴って)(船・人が)帆走する、航海する
like(前)~のような、~に似た
Palinurus(名)パリヌールス(Aeneasの船の舵手/舵をとっているうちに眠りの神に襲われて海に落ち、漂着したところのLucaniaの住民に殺された/イタリア南西部のPalinuro岬は彼の名にちなむという)
rather(副)どちらかと言えば、いやむしろ
Ulysses(名)ユリシーズ(Odysseusのラテン語名)
or(接)(訂正語句・コメントなどを導いて)いや~、あるいは(むしろ)
better still おまけに、その上
Plato(名)プラトン(427?-?347 B.C./ギリシアの哲学者)
Raphael(名)ラファエル、レイフィアル
as(接)(譲歩を表わして)~だけれども、~ながらも(=though)
call(他)(人を)(~と)呼ぶ、称する(+目+補)
family(形)家族の、家庭の
incompetent(形)無能な、役に立たない
Latin(名)ラテン語古代ローマ帝国の言語/中世に地方によって分化し、今日のイタリア語、フランス語、スペイン語ポルトガル語ルーマニア語などとなった)
especially(副)特に、とりわけ
versed(形)(通例well ~で)熟達して、精通して、通じて(in)
Greek(名)ギリシア
study(他)(~を)勉強する、学ぶ
latter(名)(代名詞的に用いて)後者(単数名詞を受ける場合は単数扱い、複数名詞を受ける場合には複数扱い)
devote(他)(devote oneselfで)(人が)(~に)身をささげる、専念する、熱中する(to)
himself(代)(再帰的に用いて)(再帰動詞の目的語に用いて)
wholly(副)まったく、完全に
philosophy(名)哲学、哲学体系
realize(他)(事実などを)はっきり理解する、悟る、了解する(+that)
field(名)(活動・研究の)分野、範囲(=discipline)
there's→there was
any(形)(否定文で名詞の前に用いて)(可算の名詞の複数形または不可算の名詞につけて)少しも(~ない)、何も(~ない)、だれも(~ない)
substance(名)資産、財産
apart from ~ ~は別として、~を除いて(=except for)
certain(形)(多くはないが)いくらかの、ある程度の
piece(名)1編の作品(詩、散文、作曲、劇)、1枚の絵、1個の彫刻(など)
Seneca, Lucius Annaeus(名)セネカ(4 B.C.?-A.D.65/ローマのストア派の哲学者・政治家・劇作家/Neroの教師・執政官)
Cicero, Marcus Tullius(名)キケロ(106-43 B.C./ローマの政治家・哲学者・雄弁家)
driven(形)(人が)駆り立てられた
desire(名)(~を求める)欲望、欲求(+to do)
leave(他)(人に)(財産を)残す(to)
to(前)(行為・作用の対象を表わして)(間接目的語に相当する句を導いて)~に
patrimony(名)(またa ~)世襲財産、家督
due(名)(通例単数形で)当然払われる(与えられる)べきもの
at home 自国で(に)、本国で(に)(⇔abroad)
happen(自)偶然(たまたま)(~)する(+to do)
Portuguese(形)ポルトガル(人、語)の
attach(他)(attach oneselfで)(時に望まれないのに)なつく、慕う(to)
Vespucci, Amerigo(名)ベスプッチ(1454?-1512/イタリアの航海者・探検家/地名のAmericaは彼のラテン名Americus Vespuciusに由来する)
constant(形)忠実な、節操の固い ・a constant friend 忠実な友
companion(名)仲間、友 ・one's constant companion いつも一緒にいる人(動物)、いつも持ち歩いているもの
on(前)(日・時・機会を表わして)~に
latter(形)(the ~、this ~、these ~)(時間的に)後のほうの、終わりの、末の、後半の
three(代)(基数の3)(複数扱い)3つ、3個(人)
of(前)(部分を表わして)~の中の
those(形)(thatの複数形/指示形容詞)(関係詞節による限定をあらかじめ指定して)あの(日本語では訳さないほうがよい)(⇔these)
voyage(名)(船・飛行機・宇宙船による)船、船旅、航海、航行、飛行
read(自)(~のことを)読んで知る(about)
except(接)(しばしばexcept thatで)~であること以外(に)は~、ということ(事実)を別にすれば
didn't did notの短縮形
instead(副)その代わりとして
nag(他)(人に)しつこくせがむ
pester(他)(人などを)(せがんだりして)悩ます、困らす、苦しめる
far(副)(程度に関して)はるかに、大いに、ずっと
prevail(自)功を奏する、首尾よくいく、うまくいく、効く
let(他)(使役を表わして)(人に)(働きかけて)(~)させる(+目+原形)
one(代)(基数の1)(単数形で)(特定の人(もの)の中の)一つ、1個、一人(of)
twenty(形)20の、20個の、20人の
leave behind(~を)置き忘れる、置き去りにする
fort(名)とりで、城砦(じょうさい)、堡塁(ほうるい)
furthest(形)=farthest(形)(farの比較級)(距離的に)最も遠い
final(形)最終の、最後の
so(接)(等位接続詞として)そこで、それで、~ので
leave(他)(副詞句を伴って)置き去りにする
in order to do ~する目的で、するために(は)
gratify(他)(欲望・気まぐれなどを)満たす
inclination(名)(~したい)気持ち、意向、思い
more(副)(~より)むしろ(than)
take up with ~ ~と仲よくなる
travel(名)旅行(すること)
last(形)(通例the ~、one's ~)生涯の終わりの、臨終の
resting place(名)(one's last ~)墓場
habit(名)~する傾向(たち)(of doing)
remark(他)(~だと)言う(+引用)
grave(名)墓、死体を埋める穴
cover(他)かばう、保護される
sky(名)(the ~、the skies)天(国)
whatever(形)(譲歩節を導いて)どんな~でも(=no matter what)
it(代)(非人称動詞(impersonal verb)の主語として)(特にさすものはなく、従って訳さないで文の形式的主語となる)(距離を漠然とさして)
from(前)(空間・時間などの起点を表わして)
heaven(名)天国、天界、極楽(=paradise/⇔hell)(古代の天文学では天を七つ(または九つ)の層と考え、その最上層が神・天使のすみかとされた)
attitude(名)(物事に対する)気持ち、考え、意見(to)
may well do 多分~だろう、(十分)~しそうだ
prove(自)(~であることが)(あとになって)わかる、(~と)判明する、(結果)(~に)なる(=turn out)(+補)
costly(形)犠牲(損失)の大きい
gracious(形)(神が)恵みあふれる、慈悲深い
once(接)ひとたび(いったん)~すると、~してしまえば
depart(自)(人・列車などが)出発する
through(前)(あちこち至る所を表わして)~じゅうを(に)、~の間を(あちこち)
territory(名)地方、地域
along with ~ ~と一緒に、同伴で
five(形)(基数の5)5の、5個の、5人の
at length ついに、ようやく
by(前)(原因を表わして)~のために
happy(形)幸運な
turn(名)(a ~)(情勢の)変化、成り行き(of)
fortune(名)運 ・by good fortune 幸運にも
in(前)(場所・位置・方向などを表わして)~において、~で ・in London ロンドンで(に)
Ceylon(名)セイロン島(インド東南方インド洋上の島/Sri Lanka共和国をなす)
get to ~ ~に達する
there(副)(前置詞・他動詞の目的語として/名詞的に)そこ、あそこ(⇔here) ・from there そこから
Calicut カリカット(インド南西部Kerala州のMalabar海岸にある市/植民地時代ヨーロッパ貿易の重要基地/かつてキャラコ(calico)の産地)
where(副)(関係副詞)(制限的用法で)~する、~した(場所、場合など)(「場所」「場合」を表わす名詞を先行詞とする形容詞節をつくる)
conveniently(副)便利に、都合よく
meet up(偶然)出会う、(動物などに)出くわす(with)
against(前)~にそむいて、~に反して
all(形)(否定的な意味の動詞や前置詞の後に用いて)一切の、なんらの
expectation(名)(時に複数形で)予期、予想、期待 ・against all expectation 予期に反して
regain(他)(場所・状態に)復帰(帰着)する、再び到着する
homeland(名)自国、母国、故国

「それもおおあてはずれ」と彼は言った。「というのは、あの人はパリヌールスのようにではなくユリシーズ、いやプラトンのように船旅をしたからです。ところでこのラファエルは――これは彼の呼び名では姓はヒュトロダエウスですが――、ラテン語にもかなり通じていないわけではないが、むしろギリシア語には非常に通暁しています〔ラテン語よりもギリシア語のほうをよく勉強したのは、彼が哲学に全心を傾倒し、この分野ではセネカキケロの多少の著作以外にはラテン語で価値あるものは皆無だということを知ったからです〕。彼は世界を見たいという望みから、故郷〔彼はポルトガル人です〕にあった自分の財産を兄弟たちにゆずり、アメリーゴ・ヴェスプッチの仲間になりました。そして最近あちこちで読まれているあの四回の航海のうちのあとの三回の航海にはずっと同行していました。その最後の航海からアメリーゴといっしょに帰国しませんでしたが、それまではいつも、アメリーゴの仲間だったのです。
帰ってこなかったというのも、彼は、最後の航海の終わりに城塞にとり残されることになった二十四人の中に自分もはいりたいと熱望し、ついにアメリーゴからその許可をとりつけたからです。それで彼はおきざりになりましたが、(故郷の)墓場よりもむしろ旅を選ぶというその心意気どおりになったわけです。というのも、彼はいつもつぎのようなことを口にしているからです。『柩を持たざるものは、天これをおおう』、それから、『天に到る道程はいずこからなりとも等し』。彼のこういう考え方は、もし神様が彼にたいしてめぐみ深くあらせられなかったら、彼にとって命とりになっていたでしょう。
ところで、彼はヴェスプッチの出発後、城塞に残った同伴のうちの五人といっしょにたくさんの国々を歴訪し、奇跡的な偶然のおかげでついにセイロンへたどりつき、そこからカリカットに出て来ました。そこで、ぐあいよくポルトガルの船団に出くわし、ついに期待もしていなかったのにふたたび祖国に帰って来たのです」

【参考文献】
Utopia (Penguin Classics)』Thomas More・著
ユートピア (中公文庫)』澤田昭夫・訳
新英和中辞典 [第7版] 並装』(研究社)
リーダーズ英和辞典 <第3版> [並装]』(研究社)
リーダーズ・プラス』(研究社)